私は,民法900条4号ただし書前段の規定(以下「本件規定」という。)が,非嫡出子の法定相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めていることは,以下の理由により,憲法14条1項に違反し,無効であると考えるので,多数意見に賛同することができない。
憲法13条,14条1項は,個人の尊厳と法の下の平等を規定し,また,憲法24条2項は,相続に関する法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない旨を規定している。
このような憲法の規定に照らすと,
憲法は,相続に関する法制度としては,子である以上,男女長幼の別なく,均等に財産を相続することを要求しているものというべきであり,
子の社会的身分等を理由として,その法的取扱いに区別を設けることは,十分な合理的根拠が存しない限り許されないと解するのが相当である。
非嫡出子であることは,自分の意思ではどうにもならない出生により取得する社会的身分である。
嫡出子と非嫡出子とを区別し,非嫡出子であることを理由に、その相続分を嫡出子のそれの2分の1とすることは,
その立法目的が,法律婚の尊重,保護という,それ自体正当なものであるとしても,
その目的を実現するための手段として、
上記の区別を設けること、及び上記数値による区別の大きさについては,十分な合理的根拠が存するものとはいい難い。
したがって,本件規定は,人を出生によって取得する社会的身分により,合理的な理由もないのに,経済的又は社会的関係において差別するものといわざるを得ず,憲法14条1項に違反するものというべきである。
また,多数意見が引用する大法廷決定後,既に9年以上が経過し,
その間,男女の結婚観等も大きく変わり,非嫡出子が増加傾向にあるなど,
立法当時に存した本件規定による相続差別を正当化する理由となった社会事情や国民感情などは,大きく変動しており,
現時点では,もはや失われたのではないかとすら思われる状況に至っていることは,前掲第一小法廷判決中の島田仁郎裁判官の補足意見及び深澤武久裁判官の反対意見で述べられているとおりである。
このような状況に照らすと,
非嫡出子が被る個人の尊厳や、法の下の平等にかかわる不利益は,憲法の基本原理に則り,できる限り早い時期に法律の改正によって救済すべきであるが,
それを待つまでもなく,司法においても救済する必要がある。
以上の理由により,私は,本件規定は憲法14条1項に違反して無効であり,原判決は破棄すべきものと考える。