戦後食糧難の時代、裁判官の説教

感性と理論

戦後食糧難の時代、裁判官の説教

食糧管理法違反(昭和23年9月29日)

(罪状)白米一斗玄米二升を購入し之を運搬するに当り無許可にて運搬した事実

自由に食糧を入手できない「食糧管理法(食管法)」を憲法25条(生存権)に違反するとして罪から逃れようとする被告人に対して


要するに(被告人は)論旨中の「憲法第二十五条」「生活権の行使」等の語は法律家でない被告人が同条第一項を、生命、自由等の不可侵を保障の規定と考えて使用した丈けのことで・・・・

・・・以上の如く法律(食糧管理法)自体は悪いのではない、

只現在食物の配給量が一般に必要な栄養を与へるに足りないから色々困ることが起るのであるが、其れは多分に政治行政の問題である、

現に取締の強化、公定価格の引上等によつて副食物の配給は多少共よくなつて来て居る、

副食物の供給が充分になれば主食は少し位不足でも栄養を保てないことはないであろう、

他供出の割当食料の運輸等がうまく行けば尚或程度の改善は期待出来ないわけではあるまい,

更に国民の自粛により所論法令に対する違反行為が少なくなり、所謂闇営業が無くなり、其結果超過供出の量が増加し食物の大部分が正規のルートに集るに至れば、食料事情は多大の好転を来すものといわれて居るのである。

かくして国内生産及許された輸入による総ての食糧を以てしてもなお絶対量が不足であるならば、国民全体が統制により均等に不足を忍び自粛精励以て復活の日を待つの外ないのである

吾々の手許(最高裁判所)に来て居るものでは、記録上自己及家族の生活に必要な食料の為めに、已むを得ざるに出でたものと認むべき様な事案は今の処一つもない、

悪質の闇屋とか其他自己のみ特別の利益を得んとして国民全般から見て必要とせられて居る統制を乱す様な行為を為す者を罰することが悪い理由はない、

法自体を違憲なりとし、其一般的不適用を主張する論旨には左袒(さたん、味方すること。賛成すること)し難い。

井上登裁判官の意見

食糧管理法の合憲性と憲法第二十五條第一項

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