ルパン対ホームズ

著 者 モーリス・ルブラン(Maurice Leblanc)
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目 次

第一話 金髪の女性

第一章 第五一四番 – 第二十三組

1 ジェルボワ氏のライティングデスク

昨年の十二月八日、ヴェルサイユ高等学校の数学教師ジェルボワ氏は、古道具屋の雑多な売場の中から、マホガニー製の小さなライティングデスクを見つけました。

引き出しの多いところがいい、スザンヌの誕生日プレゼントにぴったりだ、と彼は思いました。

ジェルボワ氏はそれほどお金があるわけではありませんが、できるかぎり娘を喜ばせたかったので、価格交渉をして六十五フランを支払いました。

2 若い紳士

彼が住所を伝えているちょうどそのとき、さっきからあちこち探し回っていた上品な身なりの若い紳士が、そのライティングデスクを見つけて尋ねました。

「いくらですか?」

「それは売却済みです。」

「ああ!・・・失礼ですが、あなたに?」

ジェルボワ氏は会釈をして、自分と同じように欲しがっている人のいるライティングデスクが手に入ったと思い、気分良く立ち去りました。

3 紳士の申し出

しかし、彼が通りを十歩も行かないところで、その若い紳士は彼に追いつき、帽子を手にとって申し分のない礼儀正しい態度で話しかけてきました。

「大変申し訳ありませんが、お尋ねしてよろしいでしょうか・・・不しつけな質問とわかっておりますが・・・他のものよりも特にこのライティングデスクを探しておられたのでしょうか?」

「いいえ、私は物理実験に使えそうな中古の天秤を探していました。」

「そうしますと、特にそれがいいというわけではないと?」

「私はこれがいいのです。それだけでです。」

「というのは、古いからですか?」

「なぜって、使いやすいからです。」

「それでしたら、同じように使いやすいライティングデスクで、これよりもっと良い状態のものと交換していただけませんか?」

「これも良い状態ですよ、交換することは私には無駄に思えます。」

しかし...

4 しつこい紳士

ジェルボア氏は短気で気難しい性格の人です。彼は素気なく答えました

「お願いですから、もう話しかけないでください。」

初対面の人物が彼の前に立ちはだかりました。

「私はあなたが支払われた額を知りませんが...私はその2倍をお支払いします。」

「ダメです。」

「3倍では?」

「もう、この辺でやめておきましょう。」

教授はイライラして叫びました

「これは私のものですから、売り物ではありません。」

その若い紳士は、忘れられないような表情をしてジェルボワ氏をじっと見つめ、何も言わず、ため息混じりに踵を返して去っていった。

5 スザンヌへの誕生プレゼント

一時間後、教授の住むヴィロフレイ通りの小さな家に、その家具が運び込まれました。

彼は娘を呼びました。

「これはおまえへのプレゼントだよ、スザンヌ。気に入ると思うのだが。」

スザンヌは、明るく幸せそうな美しい娘でした。

彼女は、豪華な贈り物をもらったかのように喜びでいっぱいになり、父親の首に飛びついてキスをしました。

その日の夜、彼女はメイドのオルタンスに手伝ってもらってそれを自分の部屋に置き、引き出しを掃除して、書類、手紙箱、郵便物、ポストカードのコレクション、そして従兄弟のフィリップを想って残しておいた密かな思い出の品をしまいました。

6 その翌日

翌日の午前七時半、ジェルボワ氏は学校に向かいました。

午前十時、スザンヌは毎日の習慣どおり、父親を学校の出口で待っていました。鉄製の柵の反対側の歩道にいる彼女の愛らしい姿と、子供のような笑顔を見つけることは、彼にとって大きな楽しみでした。