妻とその母の同時殺害と刑法第200条の罪責(昭和32年6月12日小法廷判決400)
殺人、尊属殺人未遂、強盗致傷教唆
棄却

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

妻を殺害したのと同一機会に、殺意をもつて妻の母にも加害したがその目的を遂げなかつた所為は、尊属殺人未遂罪にあたる。

【判決理由】
上告趣意について。
  1. 弁護人小林澄男の上告趣意第二点は判例違反を主張するが、
  2. 原判決において、
  3. 被告人が妻を殺害したのと同一機会に、殺意をもつて妻の母にも加害したが、その目的を遂げなかつた事実を認定し、
  4. 後者を尊属殺人未遂罪に問擬していることは正当であり、
  5. 所論引用の判例は、具体的事実関係を異にするものであつて、本件に適切でないから、所論は上告適法の理由とならない。
  1. また、同弁護人のその他の上告趣旨及び被告人の上告趣意は事実誤認、単なる訴訟法違反、量刑不当の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
  2. また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
  3. よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す る。

昭和三一年六月一二日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 本 村 善 太 郎

裁判官 島 保 裁判官 河 村 又 介 裁判官 小 林 俊 三 裁判官 垂 水 克 己