(旧)刑法(明治40年)

明治40年4月24日法律第45号
(明治41年10月1日施行)

第一編 総則

第一章 法例

第1条

第一条 本法ハ何人ヲ問ハス帝国内ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス

2 帝国外ニ在ル帝国船舶内ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ付キ亦同シ

第2条

第二条 本法ハ何人ヲ問ハス帝国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス

一 第七十三条乃至第七十六条ノ罪
二 第七十七条乃至第七十九条ノ罪
三 第八十一条乃至第八十九条ノ罪
四 第百四十八条ノ罪及ヒ其未遂罪
五 第百五十四条、第百五十五条、第百五十七条及ヒ第百五十八条ノ罪
六 第百六十二条及ヒ第百六十三条ノ罪
七 第百六十四条乃至第百六十六条ノ罪及ヒ第百六十四条第二項、第百六十五条第二項、第百六十六条第二項ノ未遂罪
第3条

第三条 本法ハ帝国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル帝国臣民ニ之ヲ適用ス

一 第百八条、第百九条第一項ノ罪、第百八条、第百九条第一項ノ例ニ依リ処断ス可キ罪及ヒ此等ノ罪ノ未遂罪
二 第百十九条ノ罪
三 第百五十九条乃至第百六十一条ノ罪
四 第百六十七条ノ罪及ヒ同条第二項ノ未遂罪
五 第百七十六条乃至第百七十九条、第百八十一条及ヒ第百八十四条ノ罪
六 第百九十九条、第二百条ノ罪及ヒ其未遂罪
七 第二百四条及ヒ第二百五条ノ罪
八 第二百十四条乃至第二百十六条ノ罪
九 第二百十八条ノ罪及ヒ同条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル罪 十 第二百二十条及ヒ第二百二十一条ノ罪 十一 第二百二十四条乃至第二百二十八条ノ罪 十二 第二百三十条ノ罪 十三 第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条乃至第二百四十一条及ヒ第二百四十三条ノ罪 十四 第二百四十六条乃至第二百五十条ノ罪 十五 第二百五十三条ノ罪 十六 第二百五十六条第二項ノ罪 2 帝国外ニ於テ帝国臣民ニ対シ前項ノ罪ヲ犯シタル外国人ニ付キ亦同シ 第四条 本法ハ帝国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル帝国ノ公務員ニ之ヲ適用ス 一 第百一条ノ罪及ヒ其未遂罪 二 第百五十六条ノ罪 三 第百九十三条、第百九十五条第二項、第百九十七条ノ罪及ヒ第百九十五条第二項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル罪 第五条 外国ニ於テ確定裁判ヲ受ケタル者ト雖モ同一行為ニ付キ更ニ処罰スルコトヲ妨ケス但犯人既ニ外国ニ於テ言渡サレタル刑ノ全部又ハ一部ノ執行ヲ受ケタルトキハ刑ノ執行ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
第6条

第六条 犯罪後ノ法律ニ因リ刑ノ変更アリタルトキハ其軽キモノヲ適用ス

第七条 本法ニ於テ公務員ト称スルハ官吏、公吏、法令ニ依リ公務ニ従事スル議員、委員其他ノ職員ヲ謂フ
2 公務所ト称スルハ公務員ノ職務ヲ行フ所ヲ謂フ

第八条 本法ノ総則ハ他ノ法令ニ於テ刑ヲ定メタルモノニ亦之ヲ適用ス但其法令ニ特別ノ規定アルトキハ此限ニ在ラス
第二章 刑

第九条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及ヒ科料ヲ主刑トシ没収ヲ附加刑トス

第十条 主刑ノ軽重ハ前条記載ノ順序ニ依ル但無期禁錮ト有期懲役トハ禁錮ヲ以テ重シトシ有期禁錮ノ長期有期懲役ノ長期ノ二倍ヲ超ユルトキハ禁錮ヲ以テ重シトス
2 同種ノ刑ハ長期ノ長キモノ又ハ多額ノ多キモノヲ以テ重シトシ長期又ハ多額ノ同シキモノハ其短期ノ長キモノ又ハ寡額ノ多キモノヲ以テ重シトス
3 二個以上ノ死刑又ハ長期若クハ多額及ヒ短期若クハ寡額ノ同シキ同種ノ刑ハ犯情ニ依リ其軽重ヲ定ム

第十一条 死刑ハ監獄内ニ於テ絞首シテ之ヲ執行ス
2 死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ其執行ニ至ルマテ之ヲ監獄ニ拘置ス

第十二条 懲役ハ無期及ヒ有期トシ有期懲役ハ一月以上十五年以下トス
2 懲役ハ監獄ニ拘置シ定役ニ服ス

第十三条 禁錮ハ無期及ヒ有期トシ有期禁錮ハ一月以上十五年以下トス
2 禁錮ハ監獄ニ拘置ス

第十四条 有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ加重スル場合ニ於テハ二十年ニ至ルコトヲ得之ヲ減軽スル場合ニ於テハ一月以下ニ降スコトヲ得

第十五条 罰金ハ二十円以上トス但之ヲ減軽スル場合ニ於テハ二十円以下ニ降スコトヲ得

第十六条 拘留ハ一日以上三十日未満トシ拘留場ニ拘置ス

第十七条 科料ハ十銭以上二十円未満トス
第18条

第十八条 罰金ヲ完納スルコト能ハサル者ハ一日以上一年以下ノ期間之ヲ労役場ニ留置ス

2 科料ヲ完納スルコト能ハサル者ハ一日以上三十日以下ノ期間之ヲ労役場ニ留置ス

3 科料ヲ併科シタル場合ト雖モ留置ノ期間ハ六十日ヲ超ユルコトヲ得ス

4 罰金又ハ科料ノ言渡ヲ為ストキハ其言渡ト共ニ罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサル場合ニ於ケル留置ノ期間ヲ定メ之ヲ言渡ス可シ

5 罰金ニ付テハ裁判確定後三十日内科料ニ付テハ裁判確定後十日内ハ本人ノ承諾アルニ非サレハ留置ノ執行ヲ為スコトヲ得ス

6 罰金又ハ科料ノ言渡ヲ受ケタル者其幾分ヲ納ムルトキハ罰金又ハ科料ノ全額ト留置日数トノ割合ニ従ヒ其金額ニ相当スル日数ヲ控除シテ之ヲ留置ス

7 留置期間内罰金又ハ科料ヲ納ムルトキハ前項ノ割合ヲ以テ残日数ニ充ツ

8 留置一日ノ割合ニ満タサル金額ハ之ヲ納ムルコトヲ得ス

第十九条 左ニ記載シタル物ハ之ヲ没収スルコトヲ得
一 犯罪行為ヲ組成シタル物
二 犯罪行為ニ供シ又ハ供セントシタル物
三 犯罪行為ヨリ生シ又ハ之ニ因リ得タル物
2 没収ハ其物犯人以外ノ者ニ属セサルトキニ限ル

第二十条 拘留又ハ科料ノミニ該ル罪ニ付テハ特別ノ規定アルニ非サレハ没収ヲ科スルコトヲ得ス但前条第一項第一号ニ記載シタル物ノ没収ハ此限ニ在ラス

第二十一条 未決勾留ノ日数ハ其全部又ハ一部ヲ本刑ニ算入スルコトヲ得
第三章 期間計算

第二十二条 期間ヲ定ムルニ月又ハ年ヲ以テシタルトキハ暦ニ従ヒテ之ヲ計算ス

第二十三条 刑期ハ裁判確定ノ日ヨリ起算ス
2 拘禁セラレサル日数ハ裁判確定後ト雖モ刑期ニ算入セス

第二十四条 受刑ノ初日ハ時間ヲ論セス全一日トシテ之ヲ計算ス時効期間ノ初日亦同シ
2 放免ハ刑期終了ノ翌日ニ於テ之ヲ行フ

第四章 刑ノ執行猶予

第25条

第二十五条 左ニ記載シタル者二年以下ノ懲役又ハ禁錮ノ言渡ヲ受ケタルトキハ情状ニ因リ裁判確定ノ日ヨリ一年以上五年以下ノ期間内其執行ヲ猶予スルコトヲ得

第二十六条 左ニ記載シタル場合ニ於テハ刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消ス可シ
一 猶予ノ期間内更ニ罪ヲ犯シ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキ
二 猶予ノ言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキ
三 前条第二号ニ記載シタル者ヲ除ク外猶予ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコト発覚シタルトキ

第二十七条 刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消サルルコトナクシテ猶予ノ期間ヲ経過シタルトキハ刑ノ言渡ハ其効力ヲ失フ
第五章 仮出獄

第二十八条 懲役又ハ禁錮ニ処セラレタル者改悛ノ状アルトキハ有期刑ニ付テハ其刑期三分ノ一無期刑ニ付テハ十年ヲ経過シタル後行政官庁ノ処分ヲ以テ仮ニ出獄ヲ許スコトヲ得

第二十九条 左ニ記載シタル場合ニ於テハ仮出獄ノ処分ヲ取消スコトヲ得
一 仮出獄中更ニ罪ヲ犯シ罰金以上ノ刑ニ処セラレタルトキ
二 仮出獄前ニ犯シタル他ノ罪ニ付キ罰金以上ノ刑ニ処セラレタルトキ
三 仮出獄前他ノ罪ニ付キ罰金以上ノ刑ニ処セラレタル者ニシテ其刑ノ執行ヲ為ス可キトキ
四 仮出獄取締規則ニ違背シタルトキ
2 仮出獄ノ処分ヲ取消シタルトキハ出獄中ノ日数ハ刑期ニ算入セス
第30条

第三十条 拘留ニ処セラレタル者ハ情状ニ因リ何時ニテモ行政官庁ノ処分ヲ以テ仮ニ出場ヲ許スコトヲ得

2 罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサルニ因リ留置セラレタル者亦同シ

第六章 時効

第三十一条 刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ時効ニ因リ其執行ノ免除ヲ得

第三十二条 時効ハ刑ノ言渡確定シタル後左ノ期間内其執行ヲ受ケサルニ因リ完成ス
一 死刑ハ三十年
二 無期ノ懲役又ハ禁錮ハ二十年
三 有期ノ懲役又ハ禁錮ハ十年以上ハ十五年、三年以上ハ十年、三年未満ハ五年
四 罰金ハ三年
五 拘留、科料及ヒ没収ハ一年

第三十三条 時効ハ法令ニ依リ執行ヲ猶予シ又ハ之ヲ停止シタル期間内ハ進行セス

第三十四条 時効ハ刑ノ執行ニ付キ犯人ヲ逮捕シタルニ因リ之ヲ中断ス
2 罰金、科料及ヒ没収ノ時効ハ執行行為ヲ為シタルニ因リ之ヲ中断ス
第七章 犯罪ノ不成立及ヒ刑ノ減免

第三十五条 法令又ハ正当ノ業務ニ因リ為シタル行為ハ之ヲ罰セス

第三十六条 急迫不正ノ侵害ニ対シ自己又ハ他人ノ権利ヲ防衛スル為メ已ムコトヲ得サルニ出テタル行為ハ之ヲ罰セス
2 防衛ノ程度ヲ超エタル行為ハ情状ニ因リ其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得

第三十七条 自己又ハ他人ノ生命、身体、自由若クハ財産ニ対スル現在ノ危難ヲ避クル為メ已ムコトヲ得サルニ出テタル行為ハ其行為ヨリ生シタル害其避ケントシタル害ノ程度ヲ超エサル場合ニ限リ之ヲ罰セス但其程度ヲ超エタル行為ハ情状ニ因リ其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
2 前項ノ規定ハ業務上特別ノ義務アル者ニハ之ヲ適用セス

第三十八条 罪ヲ犯ス意ナキ行為ハ之ヲ罰セス但法律ニ特別ノ規定アル場合ハ此限ニ在ラス
2 罪本重カル可クシテ犯ストキ知ラサル者ハ其重キニ従テ処断スルコトヲ得ス
3 法律ヲ知ラサルヲ以テ罪ヲ犯ス意ナシト為スコトヲ得ス但情状ニ因リ其刑ヲ減軽スルコトヲ得

第三十九条 心神喪失者ノ行為ハ之ヲ罰セス
2 心神耗弱者ノ行為ハ其刑ヲ減軽ス
第40条

第四十条 瘖唖者ノ行為ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ減軽ス

第四十一条 十四歳ニ満タサル者ノ行為ハ之ヲ罰セス

第四十二条 罪ヲ犯シ未タ官ニ発覚セサル前自首シタル者ハ其刑ヲ減軽スルコトヲ得
2 告訴ヲ待テ論ス可キ罪ニ付キ告訴権ヲ有スル者ニ首服シタル者亦同シ
第八章 未遂罪

第四十三条 犯罪ノ実行ニ著手シ之ヲ遂ケサル者ハ其刑ヲ減軽スルコトヲ得但自己ノ意思ニ因リ之ヲ止メタルトキハ其刑ヲ減軽又ハ免除ス

第四十四条 未遂罪ヲ罰スル場合ハ各本条ニ於テ之ヲ定ム
第九章 併合罪

第四十五条 確定裁判ヲ経サル数罪ヲ併合罪トス若シ或罪ニ付キ確定裁判アリタルトキハ止タ其罪ト其裁判確定前ニ犯シタル罪トヲ併合罪トス

第四十六条 併合罪中其一罪ニ付キ死刑ニ処ス可キトキハ他ノ刑ヲ科セス但没収ハ此限ニ在ラス
2 其一罪ニ付キ無期ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス可キトキ亦他ノ刑ヲ科セス但罰金、科料及ヒ没収ハ此限ニ在ラス

第四十七条 併合罪中二個以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス可キ罪アルトキハ其最モ重キ罪ニ付キ定メタル刑ノ長期ニ其半数ヲ加ヘタルモノヲ以テ長期トス但各罪ニ付キ定メタル刑ノ長期ヲ合算シタルモノニ超ユルコトヲ得ス

第四十八条 罰金ト他ノ刑トハ之ヲ併科ス但第四十六条第一項ノ場合ハ此限ニ在ラス
2 二個以上ノ罰金ハ各罪ニ付キ定メタル罰金ノ合算額以下ニ於テ処断ス

第四十九条 併合罪中重キ罪ニ没収ナシト雖モ他ノ罪ニ没収アルトキハ之ヲ附加スルコトヲ得
2 二個以上ノ没収ハ之ヲ併科ス

第五十条 併合罪中既ニ裁判ヲ経タル罪ト未タ裁判ヲ経サル罪トアルトキハ更ニ裁判ヲ経サル罪ニ付キ処断ス

第五十一条 併合罪ニ付キ二個以上ノ裁判アリタルトキハ其刑ヲ併セテ之ヲ執行ス但死刑ヲ執行ス可キトキハ没収ヲ除ク外他ノ刑ヲ執行セス無期ノ懲役又ハ禁錮ヲ執行ス可キトキハ罰金、科料及ヒ没収ヲ除ク外他ノ刑ヲ執行セス有期ノ懲役又ハ禁錮ノ執行ハ其最モ重キ罪ニ付キ定メタル刑ノ長期ニ其半数ヲ加ヘタルモノニ超ユルコトヲ得ス

第五十二条 併合罪ニ付キ処断セラレタル者或罪ニ付キ大赦ヲ受ケタル場合ニ於テハ特ニ大赦ヲ受ケサル罪ニ付キ刑ヲ定ム

第五十三条 拘留又ハ科料ト他ノ刑トハ之ヲ併科ス但第四十六条ノ場合ハ此限ニ在ラス
2 二個以上ノ拘留又ハ科料ハ之ヲ併科ス
第54条

第五十四条 一個ノ行為ニシテ数個ノ罪名ニ触レ又ハ犯罪ノ手段若クハ結果タル行為ニシテ他ノ罪名ニ触ルルトキハ其最モ重キ刑ヲ以テ処断ス

2 第四十九条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ適用ス

第五十五条 連続シタル数個ノ行為ニシテ同一ノ罪名ニ触ルルトキハ一罪トシテ之ヲ処断ス
第十章 累犯

第五十六条 懲役ニ処セラレタル者其執行ヲ終リ又ハ執行ノ免除アリタル日ヨリ五年内ニ更ニ罪ヲ犯シ有期懲役ニ処ス可キトキハ之ヲ再犯トス
2 懲役ニ該ル罪ト同質ノ罪ニ因リ死刑ニ処セラレタル者其執行ノ免除アリタル日ヨリ又ハ減刑ニ因リ懲役ニ減軽セラレ其執行ヲ終リ若クハ執行ノ免除アリタル日ヨリ前項ノ期間内ニ更ニ罪ヲ犯シ有期懲役ニ処ス可キトキ亦同シ
3 併合罪ニ付キ処断セラレタル者其併合罪中懲役ニ処ス可キ罪アリタルトキハ其罪最重ノモノニ非スト雖モ再犯例ノ適用ニ付テハ懲役ニ処セラレタルモノト看做ス

第五十七条 再犯ノ刑ハ其罪ニ付キ定メタル懲役ノ長期ノ二倍以下トス

第五十八条 裁判確定後再犯者タルコトヲ発見シタルトキハ前条ノ規定ニ従ヒ加重ス可キ刑ヲ定ム
2 懲役ノ執行ヲ終リタル後又ハ其執行ノ免除アリタル後発見セラレタル者ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セス

第五十九条 三犯以上ノ者ト雖モ仍ホ再犯ノ例ニ同シ
第十一章 共犯

第六十条 二人以上共同シテ犯罪ヲ実行シタル者ハ皆正犯トス

第六十一条 人ヲ教唆シテ犯罪ヲ実行セシメタル者ハ正犯ニ準ス
2 教唆者ヲ教唆シタル者亦同シ

第六十二条 正犯ヲ幇助シタル者ハ従犯トス
2 従犯ヲ教唆シタル者ハ従犯ニ準ス

第六十三条 従犯ノ刑ハ正犯ノ刑ニ照シテ減軽ス

第六十四条 拘留又ハ科料ノミニ処ス可キ罪ノ教唆者及ヒ従犯ハ特別ノ規定アルニ非サレハ之ヲ罰セス

第六十五条 犯人ノ身分ニ因リ構成ス可キ犯罪行為ニ加功シタルトキハ其身分ナキ者ト雖モ仍ホ共犯トス
2 身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキハ其身分ナキ者ニハ通常ノ刑ヲ科ス
第十二章 酌量減軽

第六十六条 犯罪ノ情状憫諒ス可キモノハ酌量シテ其刑ヲ減軽スルコトヲ得

第六十七条 法律ニ依リ刑ヲ加重又ハ減軽スル場合ト雖モ仍ホ酌量減軽ヲ為スコトヲ得
第十三章 加減例

第六十八条 法律ニ依リ刑ヲ減軽ス可キ一個又ハ数個ノ原由アルトキハ左ノ例ニ依ル
一 死刑ヲ減軽ス可キトキハ無期又ハ十年以上ノ懲役若クハ禁錮トス
二 無期ノ懲役又ハ禁錮ヲ減軽ス可キトキハ七年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮トス
三 有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ減軽ス可キトキハ其刑期ノ二分ノ一ヲ減ス
四 罰金ヲ減軽ス可キトキハ其金額ノ二分ノ一ヲ減ス
五 拘留ヲ減軽ス可キトキハ其長期ノ二分ノ一ヲ減ス
六 科料ヲ減軽ス可キトキハ其多額ノ二分ノ一ヲ減ス

第六十九条 法律ニ依リ刑ヲ減軽ス可キ場合ニ於テ各本条ニ二個以上ノ刑名アルトキハ先ツ適用ス可キ刑ヲ定メ其刑ヲ減軽ス

第七十条 懲役、禁錮又ハ拘留ヲ減軽スルニ因リ一日ニ満タサル時間ヲ剰ストキハ之ヲ除棄ス
2 罰金又ハ科料ヲ減軽スルニ因リ一銭ニ満タサル金額ヲ剰ストキ亦同シ

第七十一条 酌量減軽ヲ為ス可キトキ亦第六十八条及ヒ前条ノ例ニ依ル

第七十二条 同時ニ刑ヲ加重減軽ス可キトキハ左ノ順序ニ依ル
一 再犯加重
二 法律上ノ減軽
三 併合罪ノ加重
四 酌量減軽
第二編 罪
        

第一章 皇室ニ対スル罪

第73条

第七十三条 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス

第74条

第七十四条 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス

神宮又ハ皇陵ニ対シ不敬ノ行為アリタル者亦同シ

第75条

第七十五条 皇族ニ対シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ処シ危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期懲役ニ処ス

第76条

第七十六条 皇族ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ二月以上四年以下ノ懲役ニ処ス

第二章 内乱ニ関スル罪 第七十七条 政府ヲ顛覆シ又ハ邦土ヲ僭窃シ其他朝憲ヲ紊乱スルコトヲ目的トシテ暴動ヲ為シタル者ハ内乱ノ罪トシ左ノ区別ニ従テ処断ス 一 首魁ハ死刑又ハ無期禁錮ニ処ス 二 謀議ニ参与シ又ハ群衆ノ指揮ヲ為シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ禁錮ニ処シ其他諸般ノ職務ニ従事シタル者ハ一年以上十年以下ノ禁錮ニ処ス 三 附和随行シ其他単ニ暴動ニ干与シタル者ハ三年以下ノ禁錮ニ処ス 2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス但前項第三号ニ記載シタル者ハ此限ニ在ラス 第七十八条 内乱ノ予備又ハ陰謀ヲ為シタル者ハ一年以上十年以下ノ禁錮ニ処ス 第七十九条 兵器、金穀ヲ資給シ又ハ其他ノ行為ヲ以テ前二条ノ罪ヲ幇助シタル者ハ七年以下ノ禁錮ニ処ス 第八十条 前二条ノ罪ヲ犯スト雖モ未タ暴動ニ至ラサル前自首シタル者ハ其刑ヲ免除ス 第三章 外患ニ関スル罪 第八十一条 外国ニ通謀シテ帝国ニ対シ戦端ヲ開カシメ又ハ敵国ニ与シテ帝国ニ抗敵シタル者ハ死刑ニ処ス 第八十二条 要塞、陣営、軍隊、艦船其他軍用ニ供スル場所又ハ建造物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ死刑ニ処ス 2 兵器、弾薬其他軍用ニ供スル物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス 第八十三条 敵国ヲ利スル為メ要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬、汽車、電車、鉄道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ物ヲ損壊シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス 第八十四条 帝国ノ軍用ニ供セサル兵器、弾薬其他直接ニ戦闘ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 第八十五条 敵国ノ為メニ間諜ヲ為シ又ハ敵国ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス 2 軍事上ノ機密ヲ敵国ニ漏泄シタル者亦同シ 第八十六条 前五条ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵国ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘ又ハ帝国ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 第八十七条 前六条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第八十八条 第八十一条乃至第八十六条ニ記載シタル罪ノ予備又ハ陰謀ヲ為シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第八十九条 本章ノ規定ハ戦時同盟国ニ対スル行為ニ亦之ヲ適用ス 第四章 国交ニ関スル罪 第九十条 帝国ニ滞在スル外国ノ君主又ハ大統領ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 帝国ニ滞在スル外国ノ君主又ハ大統領ニ対シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス但外国政府ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス 第九十一条 帝国ニ派遣セラレタル外国ノ使節ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 帝国ニ派遣セラレタル外国ノ使節ニ対シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス但被害者ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス 第九十二条 外国ニ対シ侮辱ヲ加フル目的ヲ以テ其国ノ国旗其他ノ国章ヲ損壊、除去又ハ汚穢シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス但外国政府ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス 第九十三条 外国ニ対シ私ニ戦闘ヲ為ス目的ヲ以テ其予備又ハ陰謀ヲ為シタル者ハ三月以上五年以下ノ禁錮ニ処ス但自首シタル者ハ其刑ヲ免除ス 第九十四条 外国交戦ノ際局外中立ニ関スル命令ニ違背シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス 第五章 公務ノ執行ヲ妨害スル罪 第九十五条 公務員ノ職務ヲ執行スルニ当リ之ニ対シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 2 公務員ヲシテ或処分ヲ為サシメ若クハ為ササラシムル為メ又ハ其職ヲ辞セシムル為メ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者亦同シ 第九十六条 公務員ノ施シタル封印又ハ差押ノ標示ヲ損壊シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ封印又ハ標示ヲ無効タラシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス 第六章 逃走ノ罪 第九十七条 既決、未決ノ囚人逃走シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ処ス 第九十八条 既決、未決ノ囚人又ハ勾引状ノ執行ヲ受ケタル者拘禁場又ハ械具ヲ損壊シ若クハ暴行、脅迫ヲ為シ又ハ二人以上通謀シテ逃走シタルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第九十九条 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ奪取シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第百条 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ逃走セシムル目的ヲ以テ器具ヲ給与シ其他逃走ヲ容易ナラシム可キ行為ヲ為シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ目的ヲ以テ暴行又ハ脅迫ヲ為シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第百一条 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ看守又ハ護送スル者被拘禁者ヲ逃走セシメタルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第百二条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第七章 犯人蔵匿及ヒ証憑湮滅ノ罪 第百三条 罰金以上ノ刑ニ該ル罪ヲ犯シタル者又ハ拘禁中逃走シタル者ヲ蔵匿シ又ハ隠避セシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス 第百四条 他人ノ刑事被告事件ニ関スル証憑ヲ湮滅シ又ハ偽造、変造シ若クハ偽造、変造ノ証憑ヲ使用シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス 第百五条 本章ノ罪ハ犯人又ハ逃走者ノ親族ニシテ犯人又ハ逃走者ノ利益ノ為メニ犯シタルトキハ之ヲ罰セス 第八章 騒擾ノ罪 第百六条 多衆聚合シテ暴行又ハ脅迫ヲ為シタル者ハ騒擾ノ罪ト為シ左ノ区別ニ従テ処断ス 一 首魁ハ一年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 二 他人ヲ指揮シ又ハ他人ニ率先シテ勢ヲ助ケタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 三 附和随行シタル者ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 第百七条 暴行又ハ脅迫ヲ為ス為メ多衆聚合シ当該公務員ヨリ解散ノ命令ヲ受クルコト三回以上ニ及フモ仍ホ解散セサルトキハ首魁ハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処シ其他ノ者ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 第九章 放火及ヒ失火ノ罪 第百八条 火ヲ放テ現ニ人ノ住居ニ使用シ又ハ人ノ現在スル建造物、汽車、電車、艦船若クハ鉱坑ヲ焼燬シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス 第百九条 火ヲ放テ現ニ人ノ住居ニ使用セス又ハ人ノ現在セサル建造物、艦船若クハ鉱坑ヲ焼燬シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 2 前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス但公共ノ危険ヲ生セサルトキハ之ヲ罰セス 第百十条 火ヲ放テ前二条ニ記載シタル以外ノ物ヲ焼燬シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ一年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 第百十一条 第百九条第二項又ハ前条第二項ノ罪ヲ犯シ因テ第百八条又ハ第百九条第一項ニ記載シタル物ニ延焼シタルトキハ三月以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 前条第二項ノ罪ヲ犯シ因テ前条第一項ニ記載シタル物ニ延焼シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ処ス 第百十二条 第百八条及ヒ第百九条第一項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百十三条 第百八条又ハ第百九条第一項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其予備ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス但情状ニ因リ其刑ヲ免除スルコトヲ得 第百十四条 火災ノ際鎮火用ノ物ヲ隠匿又ハ損壊シ若クハ其他ノ方法ヲ以テ鎮火ヲ妨害シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第百十五条 第百九条第一項及ヒ第百十条第一項ニ記載シタル物自己ノ所有ニ係ルト雖モ差押ヲ受ケ、物権ヲ負担シ又ハ賃貸シ若クハ保険ニ付シタルモノヲ焼燬シタルトキハ他人ノ物ヲ焼燬シタル者ノ例ニ同シ 第百十六条 火ヲ失シテ第百八条ニ記載シタル物又ハ他人ノ所有ニ係ル第百九条ニ記載シタル物ヲ焼燬シタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス 2 火ヲ失シテ自己ノ所有ニ係ル第百九条ニ記載シタル物又ハ第百十条ニ記載シタル物ヲ焼燬シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者亦同シ 第百十七条 火薬、汽缶其他激発ス可キ物ヲ破裂セシメテ第百八条ニ記載シタル物又ハ他人ノ所有ニ係ル第百九条ニ記載シタル物ヲ損壊シタル者ハ放火ノ例ニ同シ自己ノ所有ニ係ル第百九条ニ記載シタル物又ハ第百十条ニ記載シタル物ヲ損壊シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者亦同シ 2 前項ノ行為過失ニ出テタルトキハ失火ノ例ニ同シ 第百十八条 瓦斯、電気又ハ蒸汽ヲ漏出若クハ流出セシメ又ハ之ヲ遮断シ因テ人ノ生命、身体又ハ財産ニ危険ヲ生セシメタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 2 瓦斯、電気又ハ蒸汽ヲ漏出若クハ流出セシメ又ハ之ヲ遮断シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第十章 溢水及ヒ水利ニ関スル罪 第百十九条 溢水セシメテ現ニ人ノ住居ニ使用シ又ハ人ノ現在スル建造物、汽車、電車若クハ鉱坑ヲ浸害シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役ニ処ス 第百二十条 溢水セシメテ前条ニ記載シタル以外ノ物ヲ浸害シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 浸害シタル物自己ノ所有ニ係ルトキハ差押ヲ受ケ、物権ヲ負担シ又ハ賃貸シ若クハ保険ニ付シタル場合ニ限リ前項ノ例ニ依ル 第百二十一条 水害ノ際防水用ノ物ヲ隠匿又ハ損壊シ若クハ其他ノ方法ヲ以テ水防ヲ妨害シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第百二十二条 過失ニ因リ溢水セシメテ第百十九条ニ記載シタル物ヲ浸害シタル者又ハ第百二十条ニ記載シタル物ヲ浸害シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス 第百二十三条 堤防ヲ決潰シ、水閘ヲ破壊シ其他水利ノ妨害ト為ル可キ行為又ハ溢水セシム可キ行為ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス 第十一章 往来ヲ妨害スル罪 第百二十四条 陸路、水路又ハ橋梁ヲ損壊又ハ壅塞シテ往来ノ妨害ヲ生セシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス 2 前項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第百二十五条 鉄道又ハ其標識ヲ損壊シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ汽車又ハ電車ノ往来ノ危険ヲ生セシメタル者ハ二年以下ノ有期懲役ニ処ス 2 灯台又ハ浮標ヲ損壊シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ艦船ノ往来ノ危険ヲ生セシメタル者亦同シ 第百二十六条 人ノ現在スル汽車又ハ電車ヲ顛覆又ハ破壊シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 2 人ノ現在スル艦船ヲ覆没又ハ破壊シタル者亦同シ 3 前二項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス 第百二十七条 第百二十五条ノ罪ヲ犯シ因テ汽車又ハ電車ノ顛覆若クハ破壊又ハ艦船ノ覆没若クハ破壊ヲ致シタル者亦前条ノ例ニ同シ 第百二十八条 第百二十四条第一項、第百二十五条及ヒ第百二十六条第一項、第二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百二十九条 過失ニ因リ汽車、電車又ハ艦船ノ往来ノ危険ヲ生セシメ又ハ汽車、電車ノ顛覆若クハ破壊又ハ艦船ノ覆没若クハ破壊ヲ致シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス 2 其業務ニ従事スル者前項ノ罪ヲ犯シタルトキハ三年以下ノ禁錮又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス 第十二章 住居ヲ侵ス罪 第百三十条 故ナク人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若クハ艦船ニ侵入シ又ハ要求ヲ受ケテ其場所ヨリ退去セサル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 第百三十一条 故ナク皇居、禁苑、離宮又ハ行在所ニ侵入シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 神宮又ハ皇陵ニ侵入シタル者亦同シ 第百三十二条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第十三章 秘密ヲ侵ス罪 第百三十三条 故ナク封緘シタル信書ヲ開披シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス 第百三十四条 医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁護人、公証人又ハ此等ノ職ニ在リシ者故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 2 宗教若クハ祷祀ノ職ニ在ル者又ハ此等ノ職ニ在リシ者故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキ亦同シ 第百三十五条 本章ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス 第十四章 阿片煙ニ関スル罪 第百三十六条 阿片煙ヲ輸入、製造又ハ販売シ若クハ販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第百三十七条 阿片煙ヲ吸食スル器具ヲ輸入、製造又ハ販売シ若クハ販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第百三十八条 税関官吏阿片煙又ハ阿片煙吸食ノ器具ヲ輸入シ又ハ其輸入ヲ許シタルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第百三十九条 阿片煙ヲ吸食シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 阿片煙ヲ吸食スル為メ房室ヲ給与シテ利ヲ図リタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第百四十条 阿片煙又ハ阿片煙吸食ノ器具ヲ所持シタル者ハ一年以下ノ懲役ニ処ス 第百四十一条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第十五章 飲料水ニ関スル罪 第百四十二条 人ノ飲料ニ供スル浄水ヲ汚穢シ因テ之ヲ用フルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 第百四十三条 水道ニ由リ公衆ニ供給スル飲料ノ浄水又ハ其水源ヲ汚穢シ因テ之ヲ用フルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第百四十四条 人ノ飲料ニ供スル浄水ニ毒物其他人ノ健康ヲ害ス可キ物ヲ混入シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 第百四十五条 前三条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第百四十六条 水道ニ由リ公衆ニ供給スル飲料ノ浄水又ハ其水源ニ毒物其他人ノ健康ヲ害ス可キ物ヲ混入シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス 第百四十七条 公衆ノ飲料ニ供スル浄水ノ水道ヲ損壊又ハ壅塞シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第十六章 通貨偽造ノ罪 第百四十八条 行使ノ目的ヲ以テ通用ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ偽造又ハ変造シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 2 偽造、変造ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シ若クハ輸入シタル者亦同シ 第百四十九条 行使ノ目的ヲ以テ内国ニ流通スル外国ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ偽造又ハ変造シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 2 偽造、変造ノ外国ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シ若クハ輸入シタル者亦同シ 第百五十条 行使ノ目的ヲ以テ偽造、変造ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ収得シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 第百五十一条 前三条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百五十二条 貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ収得シタル後其偽造又ハ変造ナルコトヲ知テ之ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シタル者ハ其名価三倍以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス但一円以下ニ降スコトヲ得ス 第百五十三条 貨幣、紙幣又ハ銀行券ノ偽造又ハ変造ノ用ニ供スル目的ヲ以テ器械又ハ原料ヲ準備シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第十七章 文書偽造ノ罪 第百五十四条 行使ノ目的ヲ以テ御璽、国璽若クハ御名ヲ使用シテ詔書其他ノ文書ヲ偽造シ又ハ偽造シタル御璽、国璽若クハ御名ヲ使用シテ詔書其他ノ文書ヲ偽造シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 2 御璽、国璽ヲ押捺シ又ハ御名ヲ署シタル詔書其他ノ文書ヲ変造シタル者亦同シ 第百五十五条 行使ノ目的ヲ以テ公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書若クハ図画ヲ偽造シ又ハ偽造シタル公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書若クハ図画ヲ偽造シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 公務所又ハ公務員ノ捺印若クハ署名シタル文書若クハ図画ヲ変造シタル者亦同シ 3 前二項ノ外公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書若クハ図画ヲ偽造シ又ハ公務所又ハ公務員ノ作リタル文書若クハ図画ヲ変造シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
第156条

第百五十六条 公務員其職務ニ関シ行使ノ目的ヲ以テ虚偽ノ文書若クハ図画ヲ作リ又ハ文書若クハ図画ヲ変造シタルトキハ印章、署名ノ有無ヲ区別シ前二条ノ例ニ依ル

第百五十七条 公務員ニ対シ虚偽ノ申立ヲ為シ権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本ニ不実ノ記載ヲ為サシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 2 公務員ニ対シ虚偽ノ申立ヲ為シ免状、鑑札又ハ旅券ニ不実ノ記載ヲ為サシメタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 3 前二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百五十八条 前四条ニ記載シタル文書又ハ図画ヲ行使シタル者ハ其文書又ハ図画ヲ偽造若クハ変造シ又ハ虚偽ノ文書若クハ図画ヲ作リ又ハ不実ノ記載ヲ為サシメタル者ト同一ノ刑ニ処ス 2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百五十九条 行使ノ目的ヲ以テ他人ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ権利、義務又ハ事実証明ニ関スル文書若クハ図画ヲ偽造シ又ハ偽造シタル他人ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ権利、義務又ハ事実証明ニ関スル文書若クハ図画ヲ偽造シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 他人ノ印章ヲ押捺シ若クハ他人ノ署名シタル権利、義務又ハ事実証明ニ関スル文書若クハ図画ヲ変造シタル者亦同シ 3 前二項ノ外権利、義務又ハ事実証明ニ関スル文書若クハ図画ヲ偽造又ハ変造シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 第百六十条 医師公務所ニ提出ス可キ診断書、検案書又ハ死亡証書ニ虚偽ノ記載ヲ為シタルトキハ三年以下ノ禁錮又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス 第百六十一条 前二条ニ記載シタル文書又ハ図画ヲ行使シタル者ハ其文書又ハ図画ヲ偽造若クハ変造シ又ハ虚偽ノ記載ヲ為シタル者ト同一ノ刑ニ処ス 2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第十八章 有価証券偽造ノ罪 第百六十二条 行使ノ目的ヲ以テ公債証書、官府ノ証券、会社ノ株券其他ノ有価証券ヲ偽造又ハ変造シタル者ハ三月以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 行使ノ目的ヲ以テ有価証券ニ虚偽ノ記入ヲ為シタル者亦同シ 第百六十三条 偽造、変造ノ有価証券又ハ虚偽ノ記入ヲ為シタル有価証券ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シ若クハ輸入シタル者ハ三月以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第十九章 印章偽造ノ罪 第百六十四条 行使ノ目的ヲ以テ御璽、国璽又ハ御名ヲ偽造シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 2 御璽、国璽又ハ御名ヲ不正ニ使用シ又ハ偽造シタル御璽、国璽又ハ御名ヲ使用シタル者亦同シ 第百六十五条 行使ノ目的ヲ以テ公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ偽造シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ不正ニ使用シ又ハ偽造シタル公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ使用シタル者亦同シ 第百六十六条 行使ノ目的ヲ以テ公務所ノ記号ヲ偽造シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 公務所ノ記号ヲ不正ニ使用シ又ハ偽造シタル公務所ノ記号ヲ使用シタル者亦同シ 第百六十七条 行使ノ目的ヲ以テ他人ノ印章若クハ署名ヲ偽造シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 他人ノ印章若クハ署名ヲ不正ニ使用シ又ハ偽造シタル印章若クハ署名ヲ使用シタル者亦同シ 第百六十八条 第百六十四条第二項、第百六十五条第二項、第百六十六条第二項及ヒ前条第二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第二十章 偽証ノ罪 第百六十九条 法律ニ依リ宣誓シタル証人虚偽ノ陳述ヲ為シタルトキハ三月以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第百七十条 前条ノ罪ヲ犯シタル者証言シタル事件ノ裁判確定前又ハ懲戒処分前自白シタルトキハ其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得 第百七十一条 法律ニ依リ宣誓シタル鑑定人又ハ通事虚偽ノ鑑定又ハ通訳ヲ為シタルトキハ前二条ノ例ニ同シ 第二十一章 誣告ノ罪 第百七十二条 人ヲシテ刑事又ハ懲戒ノ処分ヲ受ケシムル目的ヲ以テ虚偽ノ申告ヲ為シタル者ハ第百六十九条ノ例ニ同シ 第百七十三条 前条ノ罪ヲ犯シタル者申告シタル事件ノ裁判確定前又ハ懲戒処分前自白シタルトキハ其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得 第二十二章 猥褻、姦淫及ヒ重婚ノ罪 第百七十四条 公然猥褻ノ行為ヲ為シタル者ハ科料ニ処ス 第百七十五条 猥褻ノ文書、図画其他ノ物ヲ頒布若クハ販売シ又ハ公然之ヲ陳列シタル者ハ五百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持シタル者亦同シ 第百七十六条 十三歳以上ノ男女ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ以テ猥褻ノ行為ヲ為シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス十三歳ニ満タサル男女ニ対シ猥褻ノ行為ヲ為シタル者亦同シ 第百七十七条 暴行又ハ脅迫ヲ以テ十三歳以上ノ婦女ヲ姦淫シタル者ハ強姦ノ罪ト為シ二年以上ノ有期懲役ニ処ス十三歳ニ満タサル婦女ヲ姦淫シタル者亦同シ 第百七十八条 人ノ心神喪失若クハ抗拒不能ニ乗シ又ハ之ヲシテ心神ヲ喪失セシメ若クハ抗拒不能ナラシメテ猥褻ノ行為ヲ為シ又ハ姦淫シタル者ハ前二条ノ例ニ同シ 第百七十九条 前三条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百八十条 前四条ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス 第百八十一条 第百七十六条乃至第百七十九条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 第百八十二条 営利ノ目的ヲ以テ淫行ノ常習ナキ婦女ヲ勧誘シテ姦淫セシメタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス 第百八十三条 有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ処ス其相姦シタル者亦同シ 2 前項ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ之ヲ論ス但本夫姦通ヲ縦容シタルトキハ告訴ノ効ナシ 第百八十四条 配偶者アル者重ネテ婚姻ヲ為シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ処ス其相婚シタル者亦同シ 第二十三章 賭博及ヒ富籤ニ関スル罪 第百八十五条 偶然ノ輸贏ニ関シ財物ヲ以テ博戯又ハ賭事ヲ為シタル者ハ千円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス但一時ノ娯楽ニ供スル物ヲ賭シタル者ハ此限ニ在ラス 第百八十六条 常習トシテ博戯又ハ賭事ヲ為シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 賭博場ヲ開張シ又ハ博徒ヲ結合シテ利ヲ図リタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第百八十七条 富籤ヲ発売シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス 2 富籤発売ノ取次ヲ為シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス 3 前二項ノ外富籤ヲ授受シタル者ハ三百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス 第二十四章 礼拝所及ヒ墳墓ニ関スル罪 第百八十八条 神祠、仏堂、墓所其他礼拝所ニ対シ公然不敬ノ行為アリタル者ハ六月以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 2 説教、礼拝又ハ葬式ヲ妨害シタル者ハ一年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 第百八十九条 墳墓ヲ発掘シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス 第百九十条 死体、遺骨、遺髪又ハ棺内ニ蔵置シタル物ヲ損壊、遺棄又ハ領得シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 第百九十一条 第百八十九条ノ罪ヲ犯シ死体、遺骨、遺髪又ハ棺内ニ蔵置シタル物ヲ損壊、遺棄又ハ領得シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第百九十二条 検視ヲ経スシテ変死者ヲ葬リタル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス 第二十五章 涜職ノ罪 第百九十三条 公務員其職権ヲ濫用シ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ権利ヲ妨害シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 第百九十四条 裁判、検察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ之ヲ補助スル者其職権ヲ濫用シ人ヲ逮捕又ハ監禁シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 第百九十五条 裁判、検察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ之ヲ補助スル者其職務ヲ行フニ当リ刑事被告人其他ノ者ニ対シ暴行又ハ陵虐ノ行為ヲ為シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 2 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ看守又ハ護送スル者被拘禁者ニ対シ暴行又ハ陵虐ノ行為ヲ為シタルトキ亦同シ 第百九十六条 前二条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第百九十七条 公務員又ハ仲裁人其職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ処ス因テ不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為ササルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス若シ其全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハサルトキハ其価額ヲ追徴ス 第百九十八条 公務員又ハ仲裁人ニ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス 2 前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得 第二十六章 殺人ノ罪
第199条

第百九十九条 人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役ニ処ス

第200条

第二百条 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス

第201条

第二百一条 前二条ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其予備ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス但情状ニ因リ其刑ヲ免除スルコトヲ得

第202条

第二百二条 人ヲ教唆若クハ幇助シテ自殺セシメ又ハ被殺者ノ嘱託ヲ受ケ若クハ其承諾ヲ得テ之ヲ殺シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス

第203条

第二百三条 第百九十九条、第二百条及ヒ前条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

第二十七章 傷害ノ罪

第204条

第二百四条 人ノ身体ヲ傷害シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス

第205条

第二百五条 身体傷害ニ因リ人ヲ死ニ致シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス

2 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ニ対シテ犯シタルトキハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス

第206条

第二百六条 前二条ノ犯罪アルニ当リ現場ニ於テ勢ヲ助ケタル者ハ自ラ人ヲ傷害セスト雖モ一年以下ノ懲役又ハ五十円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス

第二百七条 二人以上ニテ暴行ヲ加ヘ人ヲ傷害シタル場合ニ於テ傷害ノ軽重ヲ知ルコト能ハス又ハ其傷害ヲ生セシメタル者ヲ知ルコト能ハサルトキハ共同者ニ非スト雖モ共犯ノ例ニ依ル 第二百八条 暴行ヲ加ヘタル者人ヲ傷害スルニ至ラサルトキハ一年以下ノ懲役若クハ五十円以下ノ罰金又ハ拘留若クハ科料ニ処ス 2 前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス 第二十八章 過失傷害ノ罪 第二百九条 過失ニ因リ人ヲ傷害シタル者ハ五百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス 2 前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス 第二百十条 過失ニ因リ人ヲ死ニ致シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス 第二百十一条 業務上必要ナル注意ヲ怠リ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス 第二十九章 堕胎ノ罪 第二百十二条 懐胎ノ婦女薬物ヲ用ヒ又ハ其他ノ方法ヲ以テ堕胎シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ処ス 第二百十三条 婦女ノ嘱託ヲ受ケ又ハ其承諾ヲ得テ堕胎セシメタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス因テ婦女ヲ死傷ニ致シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第二百十四条 医師、産婆、薬剤師又ハ薬種商婦女ノ嘱託ヲ受ケ又ハ其承諾ヲ得テ堕胎セシメタルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス因テ婦女ヲ死傷ニ致シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第二百十五条 婦女ノ嘱託ヲ受ケス又ハ其承諾ヲ得スシテ堕胎セシメタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第二百十六条 前条ノ罪ヲ犯シ因テ婦女ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第三十章 遺棄ノ罪 第二百十七条 老幼、不具又ハ疾病ノ為メ扶助ヲ要ス可キ者ヲ遺棄シタル者ハ一年以下ノ懲役ニ処ス 第二百十八条 老者、幼者、不具者又ハ病者ヲ保護ス可キ責任アル者之ヲ遺棄シ又ハ其生存ニ必要ナル保護ヲ為ササルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ニ対シテ犯シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第二百十九条 前二条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第三十一章 逮捕及ヒ監禁ノ罪 第二百二十条 不法ニ人ヲ逮捕又ハ監禁シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ニ対シテ犯シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第二百二十一条 前条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第三十二章 脅迫ノ罪 第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又ハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ人ヲ脅迫シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 2 親族ノ生命、身体、自由、名誉又ハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ人ヲ脅迫シタル者亦同シ 第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若クハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ脅迫シ又ハ暴行ヲ用ヒ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ権利ヲ妨害シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 親族ノ生命、身体、自由、名誉又ハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ脅迫シ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ権利ヲ妨害シタル者亦同シ 3 前二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第三十三章 略取及ヒ誘拐ノ罪 第二百二十四条 未成年者ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第二百二十五条 営利、猥褻又ハ結婚ノ目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第二百二十六条 帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 2 帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ売買シ又ハ被拐取者若クハ被売者ヲ帝国外ニ移送シタル者亦同シ 第二百二十七条 前三条ノ罪ヲ犯シタル者ヲ幇助スル目的ヲ以テ被拐取者又ハ被売者ヲ収受若クハ蔵匿シ又ハ隠避セシメタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 営利又ハ猥褻ノ目的ヲ以テ被拐取者又ハ被売者ヲ収受シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第二百二十八条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第二百二十九条 第二百二十六条ノ罪、同条ノ罪ヲ幇助スル目的ヲ以テ犯シタル第二百二十七条第一項ノ罪及ヒ此等ノ罪ノ未遂罪ヲ除ク外本章ノ罪ハ営利ノ目的ニ出テサル場合ニ限リ告訴ヲ以テ之ヲ論ス但被拐取者又ハ被売者犯人ト婚姻ヲ為シタルトキハ婚姻ノ無効又ハ取消ノ裁判確定ノ後ニ非サレハ告訴ノ効ナシ 第三十四章 名誉ニ対スル罪
第230条

第二百三十条 公然事実ヲ摘示シ人ノ名誉ヲ毀損シタル者ハ其事実ノ有無ヲ問ハス一年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス

死者ノ名誉ヲ毀損シタル者ハ誣罔ニ出ツルニ非サレハ之ヲ罰セス

第231条

第二百三十一条 事実ヲ摘示セスト雖モ公然人ヲ侮辱シタル者ハ拘留又ハ科料ニ処ス

第232条

第二百三十二条 本章ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス


第三十五章 信用及ヒ業務ニ対スル罪

第二百三十三条 虚偽ノ風説ヲ流布シ又ハ偽計ヲ用ヒ人ノ信用ヲ毀損シ若クハ其業務ヲ妨害シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス

第二百三十四条 威力ヲ用ヒ人ノ業務ヲ妨害シタル者亦前条ノ例ニ同シ

第三十六章 窃盗及ヒ強盗ノ罪

第235条

第二百三十五条 他人ノ財物ヲ窃取シタル者ハ窃盗ノ罪ト為シ十年以下ノ懲役ニ処ス

第二百三十六条 暴行又ハ脅迫ヲ以テ他人ノ財物ヲ強取シタル者ハ強盗ノ罪ト為シ五年以上ノ有期懲役ニ処ス
2 前項ノ方法ヲ以テ財産上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者亦同シ

第二百三十七条 強盗ノ目的ヲ以テ其予備ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス

第二百三十八条 窃盗財物ヲ得テ其取還ヲ拒キ又ハ逮捕ヲ免レ若クハ罪跡ヲ湮滅スル為メ暴行又ハ脅迫ヲ為シタルトキハ強盗ヲ以テ論ス

第二百三十九条 人ヲ昏酔セシメテ其財物ヲ盗取シタル者ハ強盗ヲ以テ論ス

第二百四十条 強盗人ヲ傷シタルトキハ無期又ハ七年以上ノ懲役ニ処ス死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス

第二百四十一条 強盗婦女ヲ強姦シタルトキハ無期又ハ七年以上ノ懲役ニ処ス因テ婦女ヲ死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス

第二百四十二条 自己ノ財物ト雖モ他人ノ占有ニ属シ又ハ公務所ノ命ニ因リ他人ノ看守シタルモノナルトキハ本章ノ罪ニ付テハ他人ノ財物ト看做ス

第二百四十三条 第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条乃至第二百四十一条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

第二百四十四条 直系血族、配偶者及ヒ同居ノ親族又ハ家族ノ間ニ於テ第二百三十五条ノ罪及ヒ其未遂罪ヲ犯シタル者ハ其刑ヲ免除シ其他ノ親族又ハ家族ニ係ルトキハ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
2 親族又ハ家族ニ非サル共犯ニ付テハ前項ノ例ヲ用ヒス

第二百四十五条 本章ノ罪ニ付テハ電気ハ之ヲ財物ト看做ス
第三十七章 詐欺及ヒ恐喝ノ罪

第二百四十六条 人ヲ欺罔シテ財物ヲ騙取シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス
2 前項ノ方法ヲ以テ財産上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者亦同シ

第二百四十七条 他人ノ為メ其事務ヲ処理スル者自己若クハ第三者ノ利益ヲ図リ又ハ本人ニ損害ヲ加フル目的ヲ以テ其任務ニ背キタル行為ヲ為シ本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキハ五年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス

第二百四十八条 未成年者ノ知慮浅薄又ハ人ノ心神耗弱ニ乗シテ其財物ヲ交付セシメ又ハ財産上不法ノ利益ヲ得若クハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス

第二百四十九条 人ヲ恐喝シテ財物ヲ交付セシメタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス
2 前項ノ方法ヲ以テ財産上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者亦同シ

第二百五十条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

第二百五十一条 本章ノ罪ニハ第二百四十二条、第二百四十四条及ヒ第二百四十五条ノ規定ヲ準用ス
第三十八章 横領ノ罪

第二百五十二条 自己ノ占有スル他人ノ物ヲ横領シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ処ス
2 自己ノ物ト雖モ公務所ヨリ保管ヲ命セラレタル場合ニ於テ之ヲ横領シタル者亦同シ

第二百五十三条 業務上自己ノ占有スル他人ノ物ヲ横領シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス

第二百五十四条 遺失物、漂流物其他占有ヲ離レタル他人ノ物ヲ横領シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス

第二百五十五条 本章ノ罪ニハ第二百四十四条ノ規定ヲ準用ス
第三十九章 贓物ニ関スル罪

第二百五十六条 贓物ヲ収受シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス
2 贓物ノ運搬、寄蔵、故買又ハ牙保ヲ為シタル者ハ十年以下ノ懲役及ヒ千円以下ノ罰金ニ処ス

第二百五十七条 直系血族、配偶者、同居ノ親族又ハ家族及ヒ此等ノ者ノ配偶者ノ間ニ於テ前条ノ罪ヲ犯シタル者ハ其刑ヲ免除ス
2 親族又ハ家族ニ非サル共犯ニ付テハ前項ノ例ヲ用ヒス
第四十章 毀棄及ヒ隠匿ノ罪

第二百五十八条 公務所ノ用ニ供スル文書ヲ毀棄シタル者ハ三月以上七年以下ノ懲役ニ処ス

第二百五十九条 権利、義務ニ関スル他人ノ文書ヲ毀棄シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ処ス

第二百六十条 他人ノ建造物又ハ艦船ヲ損壊シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ処ス因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス

第二百六十一条 前三条ニ記載シタル以外ノ物ヲ損壊又ハ傷害シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス

第二百六十二条 自己ノ物ト雖モ差押ヲ受ケ、物権ヲ負担シ又ハ賃貸シタルモノヲ損壊又ハ傷害シタルトキハ前三条ノ例ニ依ル

第二百六十三条 他人ノ信書ヲ隠匿シタル者ハ六月以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五十円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス

第二百六十四条 第二百五十九条、第二百六十一条及ヒ前条ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス