(旧)刑 法
明治40年法律第45号
刑法別冊ノ通之ヲ定ム
此法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
明治3年第36号布告刑法ハ此法律施行ノ日ヨリ之ヲ廃止ス(別冊)
第一編 総則
第一章 通則
(国内犯)

第一条 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。

2 日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。

(すべての者の国外犯)

第二条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。

一 削除 二 第七十七条から第七十九条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪 三 第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)、第八十七条(未遂罪)及び第八十八条(予備及び陰謀)の罪 四 第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪 五 第百五十四条(詔書偽造等)、第百五十五条(公文書偽造等)、第百五十七条(公正証書原本不実記載等)、第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪 六 第百六十二条(有価証券偽造等)及び第百六十三条(偽造有価証券行使等)の罪 七 第百六十三条の二から第百六十三条の五まで(支払用カード電磁的記録不正作出等、不正電磁的記録カード所持、支払用カード電磁的記録不正作出準備、未遂罪)の罪 八 第百六十四条から第百六十六条まで(御璽偽造及び不正使用等、公印偽造及び不正使用等、公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第百六十四条第二項、第百六十五条第二項及び第百六十六条第二項の罪の未遂罪
(国民の国外犯) 第三条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。 一 第百八条(現住建造物等放火)及び第百九条第一項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪 二 第百十九条(現住建造物等浸害)の罪 三 第百五十九条から第百六十一条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第百六十一条の二の罪 四 第百六十七条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第二項の罪の未遂罪 五 第百七十六条から第百八十一条まで(強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ及び準強制性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、未遂罪、強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪 六 第百九十八条(贈賄)の罪 七 第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪 八 第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪 九 第二百十四条から第二百十六条まで(業務上堕胎及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷)の罪 十 第二百十八条(保護責任者遺棄等)の罪及び同条の罪に係る第二百十九条(遺棄等致死傷)の罪 十一 第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪 十二 第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪 十三 第二百三十条(名誉毀損)の罪 十四 第二百三十五条から第二百三十六条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第二百三十八条から第二百四十条まで(事後強盗、昏 こん酔強盗、強盗致死傷)、第二百四十一条第一項及び第三項(強盗・強制性交等及び同致死)並びに第二百四十三条(未遂罪)の罪 十五 第二百四十六条から第二百五十条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪 十六 第二百五十三条(業務上横領)の罪 十七 第二百五十六条第二項(盗品譲受け等)の罪
(国民以外の者の国外犯)

第三条の二 この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。

一 第百七十六条から第百八十一条まで(強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ及び準強制性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、未遂罪、強制わいせつ等致死傷)の罪 二 第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪 三 第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪 四 第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪 五 第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪 六 第二百三十六条(強盗)、第二百三十八条から第二百四十条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷)並びに第二百四十一条第一項及び第三項(強盗・強制性交等及び同致死)の罪並びにこれらの罪(同条第一項の罪を除く。)の未遂罪
(公務員の国外犯) 第四条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国の公務員に適用する。 一 第百一条(看守者等による逃走援助)の罪及びその未遂罪 二 第百五十六条(虚偽公文書作成等)の罪 三 第百九十三条(公務員職権濫用)、第百九十五条第二項(特別公務員暴行陵虐)及び第百九十七条から第百九十七条の四まで(収賄、受託収賄及び事前収賄、第三者供賄、加重収賄及び事後収賄、あっせん収賄)の罪並びに第百九十五条第二項の罪に係る第百九十六条(特別公務員職権濫用等致死傷)の罪 (条約による国外犯) 第四条の二 第二条から前条までに規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。 (外国判決の効力) 第五条 外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。
(刑の変更)

第六条 犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。

(定義)

第七条 この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。

2 この法律において「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいう。

第七条の二 この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。

(他の法令の罪に対する適用)

第八条 この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。

第二章 刑
(刑の種類) 第九条 死刑、懲役、禁錮 こ、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。 (刑の軽重) 第十条 主刑の軽重は、前条に規定する順序による。ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。 2 同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期又は多額が同じであるときは、短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。 3 二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。 (死刑) 第十一条 死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。 2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。 (懲役) 第十二条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。 2 懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。 (禁錮) 第十三条 禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、一月以上二十年以下とする。 2 禁錮は、刑事施設に拘置する。 (有期の懲役及び禁錮の加減の限度) 第十四条 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。 2 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては三十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。 (罰金) 第十五条 罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。 (拘留) 第十六条 拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。 (科料) 第十七条 科料は、千円以上一万円未満とする。 (労役場留置) 第十八条 罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。 2 科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。 3 罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、三年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、六十日を超えることができない。 4 罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。 5 罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。 6 罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。 (没収) 第十九条 次に掲げる物は、没収することができる。 一 犯罪行為を組成した物 二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物 三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物 四 前号に掲げる物の対価として得た物 2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。 (追徴) 第十九条の二 前条第一項第三号又は第四号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。 (没収の制限) 第二十条 拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。ただし、第十九条第一項第一号に掲げる物の没収については、この限りでない。 (未決勾 こう留日数の本刑算入) 第二十一条 未決勾 こう留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。
第三章 期間計算
(期間の計算) 第二十二条 月又は年によって期間を定めたときは、暦に従って計算する。 (刑期の計算) 第二十三条 刑期は、裁判が確定した日から起算する。 2 拘禁されていない日数は、裁判が確定した後であっても、刑期に算入しない。 (受刑等の初日及び釈放) 第二十四条 受刑の初日は、時間にかかわらず、一日として計算する。時効期間の初日についても、同様とする。 2 刑期が終了した場合における釈放は、その終了の日の翌日に行う。
第四章 刑の執行猶予
(刑の全部の執行猶予) 第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。 一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。 (刑の全部の執行猶予中の保護観察) 第二十五条の二 前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。 2 前項の規定により付せられた保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。 3 前項の規定により保護観察を仮に解除されたときは、前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。 (刑の全部の執行猶予の必要的取消し) 第二十六条 次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。 一 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。 二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。 三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。 (刑の全部の執行猶予の裁量的取消し) 第二十六条の二 次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。 一 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。 二 第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。 三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。 (刑の全部の執行猶予の取消しの場合における他の刑の執行猶予の取消し) 第二十六条の三 前二条の規定により禁錮以上の刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。 (刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果) 第二十七条 刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。 (刑の一部の執行猶予) 第二十七条の二 次に掲げる者が三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。 一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者 三 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 2 前項の規定によりその一部の執行を猶予された刑については、そのうち執行が猶予されなかった部分の期間を執行し、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から、その猶予の期間を起算する。 3 前項の規定にかかわらず、その刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった時において他に執行すべき懲役又は禁錮があるときは、第一項の規定による猶予の期間は、その執行すべき懲役若しくは禁錮の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から起算する。 (刑の一部の執行猶予中の保護観察) 第二十七条の三 前条第一項の場合においては、猶予の期間中保護観察に付することができる。 2 前項の規定により付せられた保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。 3 前項の規定により保護観察を仮に解除されたときは、第二十七条の五第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。 (刑の一部の執行猶予の必要的取消し) 第二十七条の四 次に掲げる場合においては、刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十七条の二第一項第三号に掲げる者であるときは、この限りでない。 一 猶予の言渡し後に更に罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられたとき。 二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたとき。 三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないことが発覚したとき。 (刑の一部の執行猶予の裁量的取消し) 第二十七条の五 次に掲げる場合においては、刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。 一 猶予の言渡し後に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。 二 第二十七条の三第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守しなかったとき。 (刑の一部の執行猶予の取消しの場合における他の刑の執行猶予の取消し) 第二十七条の六 前二条の規定により刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。 (刑の一部の執行猶予の猶予期間経過の効果) 第二十七条の七 刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、その懲役又は禁錮を執行が猶予されなかった部分の期間を刑期とする懲役又は禁錮に減軽する。この場合においては、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日において、刑の執行を受け終わったものとする。
第五章 仮釈放
(仮釈放) 第二十八条 懲役又は禁錮に処せられた者に改悛 しゆんの状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。 (仮釈放の取消し等) 第二十九条 次に掲げる場合においては、仮釈放の処分を取り消すことができる。 一 仮釈放中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。 二 仮釈放前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき。 三 仮釈放前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の執行をすべきとき。 四 仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。 2 刑の一部の執行猶予の言渡しを受け、その刑について仮釈放の処分を受けた場合において、当該仮釈放中に当該執行猶予の言渡しを取り消されたときは、その処分は、効力を失う。 3 仮釈放の処分を取り消したとき、又は前項の規定により仮釈放の処分が効力を失ったときは、釈放中の日数は、刑期に算入しない。 (仮出場) 第三十条 拘留に処せられた者は、情状により、いつでも、行政官庁の処分によって仮に出場を許すことができる。 2 罰金又は科料を完納することができないため留置された者も、前項と同様とする。
第六章 刑の時効及び刑の消滅
(刑の時効)

第三十一条 刑(死刑を除く。)の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。

(時効の期間)

第三十二条 時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。

一 無期の懲役又は禁錮については三十年

二 十年以上の有期の懲役又は禁錮については二十年

三 三年以上十年未満の懲役又は禁錮については十年

四 三年未満の懲役又は禁錮については五年

五 罰金については三年

六 拘留、科料及び没収については一年

(時効の停止) 第三十三条 時効は、法令により執行を猶予し、又は停止した期間内は、進行しない。 (時効の中断) 第三十四条 懲役、禁錮及び拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者をその執行のために拘束することによって中断する。 2 罰金、科料及び没収の時効は、執行行為をすることによって中断する。 (刑の消滅) 第三十四条の二 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。 2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
第七章 犯罪の不成立及び刑の減免
(正当行為) 第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。 (正当防衛) 第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。 2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。 (緊急避難) 第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。 2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。 (故意) 第三十八条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。 2 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。 3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。 (心神喪失及び心神耗弱) 第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。 2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。 第四十条 削除 (責任年齢) 第四十一条 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。 (自首等) 第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。 2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
第八章 未遂罪
(未遂減免) 第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。 (未遂罪) 第四十四条 未遂を罰する場合は、各本条で定める。
第九章 併合罪
(併合罪) 第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。 (併科の制限) 第四十六条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。 2 併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。 (有期の懲役及び禁錮の加重) 第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。 (罰金の併科等) 第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。 2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。 (没収の付加) 第四十九条 併合罪のうちの重い罪について没収を科さない場合であっても、他の罪について没収の事由があるときは、これを付加することができる。 2 二個以上の没収は、併科する。 (余罪の処理) 第五十条 併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。 (併合罪に係る二個以上の刑の執行) 第五十一条 併合罪について二個以上の裁判があったときは、その刑を併せて執行する。ただし、死刑を執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期の懲役又は禁錮を執行すべきときは、罰金、科料及び没収を除き、他の刑を執行しない。 2 前項の場合における有期の懲役又は禁錮の執行は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを超えることができない。 (一部に大赦があった場合の措置) 第五十二条 併合罪について処断された者がその一部の罪につき大赦を受けたときは、他の罪について改めて刑を定める。 (拘留及び科料の併科) 第五十三条 拘留又は科料と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条の場合は、この限りでない。 2 二個以上の拘留又は科料は、併科する。 (一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理) 第五十四条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。 2 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。 第五十五条 削除
第十章 累犯
(再犯) 第五十六条 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。 2 懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者がその執行の免除を得た日又は減刑により懲役に減軽されてその執行を終わった日若しくはその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときも、前項と同様とする。 3 併合罪について処断された者が、その併合罪のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかったものであるときは、再犯に関する規定の適用については、懲役に処せられたものとみなす。 (再犯加重) 第五十七条 再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。 第五十八条 削除 (三犯以上の累犯) 第五十九条 三犯以上の者についても、再犯の例による。
第十一章 共犯
(共同正犯)

第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。 (教唆)

第六十一条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。

2 教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。

(幇助)

第六十二条 正犯を幇 ほう助した者は、従犯とする。

2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。

(従犯減軽)

第六十三条 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

(教唆及び幇助の処罰の制限)

第六十四条 拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。

(身分犯の共犯)

第六十五条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。

2 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。

第十二章 酌量減軽
(酌量減軽) 第六十六条 犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。 (法律上の加減と酌量減軽) 第六十七条 法律上刑を加重し、又は減軽する場合であっても、酌量減軽をすることができる。
第十三章 加重減軽の方法
(法律上の減軽の方法) 第六十八条 法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。 一 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮とする。 二 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。 三 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。 四 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の二分の一を減ずる。 五 拘留を減軽するときは、その長期の二分の一を減ずる。 六 科料を減軽するときは、その多額の二分の一を減ずる。 (法律上の減軽と刑の選択) 第六十九条 法律上刑を減軽すべき場合において、各本条に二個以上の刑名があるときは、まず適用する刑を定めて、その刑を減軽する。 (端数の切捨て) 第七十条 懲役、禁錮又は拘留を減軽することにより一日に満たない端数が生じたときは、これを切り捨てる。 (酌量減軽の方法) 第七十一条 酌量減軽をするときも、第六十八条及び前条の例による。 (加重減軽の順序) 第七十二条 同時に刑を加重し、又は減軽するときは、次の順序による。 一 再犯加重 二 法律上の減軽 三 併合罪の加重 四 酌量減軽
第二編 罪
第一章 削除 ( 第一章 皇室ニ対スル罪 
第七十三条 削除
明治40年4月24日法律第45号(明治41年10月1日施行版より)

第七十三条 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス

第七十四条 削除
明治40年4月24日法律第45号(明治41年10月1日施行版より)

第七十四条 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス

2 神宮又ハ皇陵ニ対シ不敬ノ行為アリタル者亦同シ

第七十五条 削除
明治40年4月24日法律第45号(明治41年10月1日施行版より)

第七十五条 皇族ニ対シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ処シ危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期懲役ニ処ス

第七十六条 削除
明治40年4月24日法律第45号(明治41年10月1日施行版より)

第七十六条 皇族ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ二月以上四年以下ノ懲役ニ処ス

第二章 内乱に関する罪
(内乱) 第七十七条 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。 一 首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。 二 謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は三年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は一年以上十年以下の禁錮に処する。 三 付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、三年以下の禁錮に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。ただし、同項第三号に規定する者については、この限りでない。 (予備及び陰謀) 第七十八条 内乱の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の禁錮に処する。 (内乱等幇助) 第七十九条 兵器、資金若しくは食糧を供給し、又はその他の行為により、前二条の罪を幇助した者は、七年以下の禁錮に処する。 (自首による刑の免除) 第八十条 前二条の罪を犯した者であっても、暴動に至る前に自首したときは、その刑を免除する。
第三章 外患に関する罪
(外患誘致) 第八十一条 外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。 (外患援助) 第八十二条 日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の懲役に処する。 第八十三条 削除 第八十四条 削除 第八十五条 削除 第八十六条 削除 (未遂罪) 第八十七条 第八十一条及び第八十二条の罪の未遂は、罰する。 (予備及び陰謀) 第八十八条 第八十一条又は第八十二条の罪の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 第八十九条 削除
第四章 国交に関する罪
第九十条 削除 第九十一条 削除 (外国国章損壊等) 第九十二条 外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 2 前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない。 (私戦予備及び陰謀) 第九十三条 外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、三月以上五年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。 (中立命令違反) 第九十四条 外国が交戦している際に、局外中立に関する命令に違反した者は、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
第五章 公務の執行を妨害する罪
(公務執行妨害及び職務強要) 第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。 2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。 (封印等破棄) 第九十六条 公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印若しくは差押えの表示に係る命令若しくは処分を無効にした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 (強制執行妨害目的財産損壊等) 第九十六条の二 強制執行を妨害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第三号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。 一 強制執行を受け、若しくは受けるべき財産を隠匿し、損壊し、若しくはその譲渡を仮装し、又は債務の負担を仮装する行為 二 強制執行を受け、又は受けるべき財産について、その現状を改変して、価格を減損し、又は強制執行の費用を増大させる行為 三 金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為 (強制執行行為妨害等) 第九十六条の三 偽計又は威力を用いて、立入り、占有者の確認その他の強制執行の行為を妨害した者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 2 強制執行の申立てをさせず又はその申立てを取り下げさせる目的で、申立権者又はその代理人に対して暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。 (強制執行関係売却妨害) 第九十六条の四 偽計又は威力を用いて、強制執行において行われ、又は行われるべき売却の公正を害すべき行為をした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 (加重封印等破棄等) 第九十六条の五 報酬を得、又は得させる目的で、人の債務に関して、第九十六条から前条までの罪を犯した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 (公契約関係競売等妨害) 第九十六条の六 偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 2 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。
第六章 逃走の罪
(逃走) 第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。 (加重逃走) 第九十八条 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。 (被拘禁者奪取) 第九十九条 法令により拘禁された者を奪取した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (逃走援助) 第百条 法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、三年以下の懲役に処する。 2 前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (看守者等による逃走援助) 第百一条 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは、一年以上十年以下の懲役に処する。 (未遂罪) 第百二条 この章の罪の未遂は、罰する。
第七章 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪
(犯人蔵匿等) 第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 (証拠隠滅等) 第百四条 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 (親族による犯罪に関する特例) 第百五条 前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。 (証人等威迫) 第百五条の二 自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第八章 騒乱の罪
(騒乱) 第百六条 多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。 一 首謀者は、一年以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。 二 他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。 三 付和随行した者は、十万円以下の罰金に処する。 (多衆不解散) 第百七条 暴行又は脅迫をするため多衆が集合した場合において、権限のある公務員から解散の命令を三回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったときは、首謀者は三年以下の懲役又は禁錮に処し、その他の者は十万円以下の罰金に処する。
第九章 放火及び失火の罪
(現住建造物等放火) 第百八条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。 (非現住建造物等放火) 第百九条 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。 2 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。 (建造物等以外放火) 第百十条 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 2 前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 (延焼) 第百十一条 第百九条第二項又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。 2 前条第二項の罪を犯し、よって同条第一項に規定する物に延焼させたときは、三年以下の懲役に処する。 (未遂罪) 第百十二条 第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。 (予備) 第百十三条 第百八条又は第百九条第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。 (消火妨害) 第百十四条 火災の際に、消火用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、消火を妨害した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 (差押え等に係る自己の物に関する特例) 第百十五条 第百九条第一項及び第百十条第一項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合において、これを焼損したときは、他人の物を焼損した者の例による。 (失火) 第百十六条 失火により、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を焼損した者は、五十万円以下の罰金に処する。 2 失火により、第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。 (激発物破裂) 第百十七条 火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。 2 前項の行為が過失によるときは、失火の例による。 (業務上失火等) 第百十七条の二 第百十六条又は前条第一項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、三年以下の禁錮又は百五十万円以下の罰金に処する。 (ガス漏出等及び同致死傷) 第百十八条 ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 2 ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第十章 出水及び水利に関する罪
(現住建造物等浸害) 第百十九条 出水させて、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車又は鉱坑を浸害した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。 (非現住建造物等浸害) 第百二十条 出水させて、前条に規定する物以外の物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 2 浸害した物が自己の所有に係るときは、その物が差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合に限り、前項の例による。 (水防妨害) 第百二十一条 水害の際に、水防用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、水防を妨害した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 (過失建造物等浸害) 第百二十二条 過失により出水させて、第百十九条に規定する物を浸害した者又は第百二十条に規定する物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、二十万円以下の罰金に処する。 (水利妨害及び出水危険) 第百二十三条 堤防を決壊させ、水門を破壊し、その他水利の妨害となるべき行為又は出水させるべき行為をした者は、二年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金に処する。
第十一章 往来を妨害する罪
(往来妨害及び同致死傷) 第百二十四条 陸路、水路又は橋を損壊し、又は閉塞 そくして往来の妨害を生じさせた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 2 前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 (往来危険) 第百二十五条 鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。 2 灯台若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。 (汽車転覆等及び同致死) 第百二十六条 現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。 2 現に人がいる艦船を転覆させ、沈没させ、又は破壊した者も、前項と同様とする。 3 前二項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。 (往来危険による汽車転覆等) 第百二十七条 第百二十五条の罪を犯し、よって汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、又は艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者も、前条の例による。 (未遂罪) 第百二十八条 第百二十四条第一項、第百二十五条並びに第百二十六条第一項及び第二項の罪の未遂は、罰する。 (過失往来危険) 第百二十九条 過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、三十万円以下の罰金に処する。 2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
第十二章 住居を侵す罪
(住居侵入等) 第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 第百三十一条 削除 (未遂罪) 第百三十二条 第百三十条の罪の未遂は、罰する。
第十三章 秘密を侵す罪
(信書開封) 第百三十三条 正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 (秘密漏示) 第百三十四条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 2 宗教、祈祷 とう若しくは祭祀 しの職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。 (親告罪) 第百三十五条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第十四章 あへん煙に関する罪
(あへん煙輸入等) 第百三十六条 あへん煙を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、六月以上七年以下の懲役に処する。 (あへん煙吸食器具輸入等) 第百三十七条 あへん煙を吸食する器具を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (税関職員によるあへん煙輸入等) 第百三十八条 税関職員が、あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を輸入し、又はこれらの輸入を許したときは、一年以上十年以下の懲役に処する。 (あへん煙吸食及び場所提供) 第百三十九条 あへん煙を吸食した者は、三年以下の懲役に処する。 2 あへん煙の吸食のため建物又は室を提供して利益を図った者は、六月以上七年以下の懲役に処する。 (あへん煙等所持) 第百四十条 あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を所持した者は、一年以下の懲役に処する。 (未遂罪) 第百四十一条 この章の罪の未遂は、罰する。
第十五章 飲料水に関する罪
(浄水汚染) 第百四十二条 人の飲料に供する浄水を汚染し、よって使用することができないようにした者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 (水道汚染) 第百四十三条 水道により公衆に供給する飲料の浄水又はその水源を汚染し、よって使用することができないようにした者は、六月以上七年以下の懲役に処する。 (浄水毒物等混入) 第百四十四条 人の飲料に供する浄水に毒物その他人の健康を害すべき物を混入した者は、三年以下の懲役に処する。 (浄水汚染等致死傷) 第百四十五条 前三条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 (水道毒物等混入及び同致死) 第百四十六条 水道により公衆に供給する飲料の浄水又はその水源に毒物その他人の健康を害すべき物を混入した者は、二年以上の有期懲役に処する。よって人を死亡させた者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。 (水道損壊及び閉塞) 第百四十七条 公衆の飲料に供する浄水の水道を損壊し、又は閉塞した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第十六章 通貨偽造の罪
(通貨偽造及び行使等) 第百四十八条 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。 2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。 (外国通貨偽造及び行使等) 第百四十九条 行使の目的で、日本国内に流通している外国の貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、二年以上の有期懲役に処する。 2 偽造又は変造の外国の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。 (偽造通貨等収得) 第百五十条 行使の目的で、偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を収得した者は、三年以下の懲役に処する。 (未遂罪) 第百五十一条 前三条の罪の未遂は、罰する。 (収得後知情行使等) 第百五十二条 貨幣、紙幣又は銀行券を収得した後に、それが偽造又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、その額面価格の三倍以下の罰金又は科料に処する。ただし、二千円以下にすることはできない。 (通貨偽造等準備) 第百五十三条 貨幣、紙幣又は銀行券の偽造又は変造の用に供する目的で、器械又は原料を準備した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第十七章 文書偽造の罪
(詔書偽造等) 第百五十四条 行使の目的で、御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。 2 御璽若しくは国璽を押し又は御名を署した詔書その他の文書を変造した者も、前項と同様とする。 (公文書偽造等) 第百五十五条 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 2 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。 3 前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 (虚偽公文書作成等) 第百五十六条 公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。 (公正証書原本不実記載等) 第百五十七条 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 2 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 3 前二項の罪の未遂は、罰する。 (偽造公文書行使等) 第百五十八条 第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。 (私文書偽造等) 第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。 3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 (虚偽診断書等作成) 第百六十条 医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、三年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。 (偽造私文書等行使) 第百六十一条 前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。 (電磁的記録不正作出及び供用) 第百六十一条の二 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 2 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 3 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。 4 前項の罪の未遂は、罰する。
第十八章 有価証券偽造の罪
(有価証券偽造等) 第百六十二条 行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。 2 行使の目的で、有価証券に虚偽の記入をした者も、前項と同様とする。 (偽造有価証券行使等) 第百六十三条 偽造若しくは変造の有価証券又は虚偽の記入がある有価証券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。
第十八章の二 支払用カード電磁的記録に関する罪
(支払用カード電磁的記録不正作出等) 第百六十三条の二 人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するものを不正に作った者は、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録を不正に作った者も、同様とする。 2 不正に作られた前項の電磁的記録を、同項の目的で、人の財産上の事務処理の用に供した者も、同項と同様とする。 3 不正に作られた第一項の電磁的記録をその構成部分とするカードを、同項の目的で、譲り渡し、貸し渡し、又は輸入した者も、同項と同様とする。 (不正電磁的記録カード所持) 第百六十三条の三 前条第一項の目的で、同条第三項のカードを所持した者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (支払用カード電磁的記録不正作出準備) 第百六十三条の四 第百六十三条の二第一項の犯罪行為の用に供する目的で、同項の電磁的記録の情報を取得した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。情を知って、その情報を提供した者も、同様とする。 2 不正に取得された第百六十三条の二第一項の電磁的記録の情報を、前項の目的で保管した者も、同項と同様とする。 3 第一項の目的で、器械又は原料を準備した者も、同項と同様とする。 (未遂罪) 第百六十三条の五 第百六十三条の二及び前条第一項の罪の未遂は、罰する。
第十九章 印章偽造の罪
(御璽偽造及び不正使用等) 第百六十四条 行使の目的で、御璽、国璽又は御名を偽造した者は、二年以上の有期懲役に処する。 2 御璽、国璽若しくは御名を不正に使用し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用した者も、前項と同様とする。 (公印偽造及び不正使用等) 第百六十五条 行使の目的で、公務所又は公務員の印章又は署名を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 2 公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。 (公記号偽造及び不正使用等) 第百六十六条 行使の目的で、公務所の記号を偽造した者は、三年以下の懲役に処する。 2 公務所の記号を不正に使用し、又は偽造した公務所の記号を使用した者も、前項と同様とする。 (私印偽造及び不正使用等) 第百六十七条 行使の目的で、他人の印章又は署名を偽造した者は、三年以下の懲役に処する。 2 他人の印章若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した印章若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。 (未遂罪) 第百六十八条 第百六十四条第二項、第百六十五条第二項、第百六十六条第二項及び前条第二項の罪の未遂は、罰する。
第十九章の二 不正指令電磁的記録に関する罪
(不正指令電磁的記録作成等) 第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録 二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録 2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。 3 前項の罪の未遂は、罰する。 (不正指令電磁的記録取得等) 第百六十八条の三 正当な理由がないのに、前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第二十章 偽証の罪
(偽証) 第百六十九条 法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。 (自白による刑の減免) 第百七十条 前条の罪を犯した者が、その証言をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。 (虚偽鑑定等) 第百七十一条 法律により宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたときは、前二条の例による。
第二十一章 虚偽告訴の罪
(虚偽告訴等) 第百七十二条 人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。 (自白による刑の減免) 第百七十三条 前条の罪を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第二十二章 わいせつ、強制性交等及び重婚の罪
(公然わいせつ) 第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 (わいせつ物頒布等) 第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。 2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。 (強制わいせつ) 第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。 (強制性交等) 第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛 こう門性交又は口腔 くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。 (準強制わいせつ及び準強制性交等) 第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。 2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。 (監護者わいせつ及び監護者性交等) 第百七十九条 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。 2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。 (未遂罪) 第百八十条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。 (強制わいせつ等致死傷) 第百八十一条 第百七十六条、第百七十八条第一項若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。 2 第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。 (淫行勧誘) 第百八十二条 営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦 かん淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 第百八十三条 削除 (重婚) 第百八十四条 配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。
第二十三章 賭 と博及び富くじに関する罪
(賭 と博) 第百八十五条  賭 と博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭 かけたにとどまるときは、この限りでない。 (常習賭博及び賭博場開張等図利) 第百八十六条 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。 2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (富くじ発売等) 第百八十七条 富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。 2 富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 3 前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。
第二十四章 礼拝所及び墳墓に関する罪
(礼拝所不敬及び説教等妨害) 第百八十八条 神祠 し、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処する。 2 説教、礼拝又は葬式を妨害した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金に処する。 (墳墓発掘) 第百八十九条 墳墓を発掘した者は、二年以下の懲役に処する。 (死体損壊等) 第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。 (墳墓発掘死体損壊等) 第百九十一条 第百八十九条の罪を犯して、死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (変死者密葬) 第百九十二条 検視を経ないで変死者を葬った者は、十万円以下の罰金又は科料に処する。
第二十五章 汚職の罪
(公務員職権濫用) 第百九十三条 公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役又は禁錮に処する。 (特別公務員職権濫用) 第百九十四条 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。 (特別公務員暴行陵虐) 第百九十五条 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役又は禁錮に処する。 2 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。 (特別公務員職権濫用等致死傷) 第百九十六条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 (収賄、受託収賄及び事前収賄) 第百九十七条 公務員が、その職務に関し、賄賂 ろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。 2 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。 (第三者供賄) 第百九十七条の二 公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
(加重収賄及び事後収賄)

第百九十七条の三 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。

2 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。

3 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

平成7年6月1日施行 刑法の一部を改正する法律(平成7年法律第91号)改正前より

第百九十七条ノ三 公務員又ハ仲裁人前二条ノ罪ヲ犯シ因テ不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為ササルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス

2 公務員又ハ仲裁人其職務上不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為ササリシコトニ関シ賄賂ヲ収受、要求若クハ約束シ又ハ第三者ニ之ヲ供与セシメ其供与ヲ要求若クハ約束シタルトキ亦同シ

3 公務員又ハ仲裁人タリシ者其在職中請託ヲ受ケテ職務上不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為ササリシコトニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ五年以下ノ懲役ニ処ス

(あっせん収賄) 第百九十七条の四 公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。 (没収及び追徴) 第百九十七条の五 犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。 (贈賄) 第百九十八条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
第二十六章 殺人の罪
(殺人)

第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(尊属殺人)

第二百条 削除

明治40年4月24日法律第45号(明治41年10月1日施行版より)

第二百条 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス

(予備)

第二百一条 第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

(自殺関与及び同意殺人)

第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

(未遂罪)

第二百三条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

明治40年4月24日法律第45号(明治41年10月1日施行版より)

第二百三条 第百九十九条、第二百条及ヒ前条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

第二十七章 傷害の罪
(傷害)

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(傷害致死)

第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

明治40年4月24日法律第45号(明治41年10月1日施行版より)

第二百五条 身体傷害ニ因リ人ヲ死ニ致シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス

2 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ニ対シテ犯シタルトキハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス

(現場助勢) 第二百六条 前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 (同時傷害の特例) 第二百七条 二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。 (暴行) 第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 (凶器準備集合及び結集) 第二百八条の二 二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 2 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、三年以下の懲役に処する。
第二十八章 過失傷害の罪
(過失傷害) 第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。 2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 (過失致死) 第二百十条 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。 (業務上過失致死傷等) 第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
第二十九章 堕胎の罪
(堕胎) 第二百十二条 妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。 (同意堕胎及び同致死傷) 第二百十三条 女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させた者は、二年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 (業務上堕胎及び同致死傷) 第二百十四条 医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、三月以上五年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、六月以上七年以下の懲役に処する。 (不同意堕胎) 第二百十五条 女子の嘱託を受けないで、又はその承諾を得ないで堕胎させた者は、六月以上七年以下の懲役に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。 (不同意堕胎致死傷) 第二百十六条 前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第三十章 遺棄の罪
(遺棄)

第二百十七条 老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。

(保護責任者遺棄等)

第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

明治40年4月24日法律第45号(明治41年10月1日施行版より)

第二百十八条 老者、幼者、不具者又ハ病者ヲ保護ス可キ責任アル者之ヲ遺棄シ又ハ其生存ニ必要ナル保護ヲ為ササルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス

2 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ニ対シテ犯シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス

(遺棄等致死傷)

第二百十九条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

第三十一章 逮捕及び監禁の罪
(逮捕及び監禁)

第二百二十条 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

明治40年4月24日法律第45号(明治41年10月1日施行版より)

第二百二十条 不法ニ人ヲ逮捕又ハ監禁シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス

2 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ニ対シテ犯シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス

(逮捕等致死傷)

第二百二十一条 前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

第三十二章 脅迫の罪
(脅迫)

第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

(強要)

第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。

2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。

3 前二項の罪の未遂は、罰する。

第三十三章 略取、誘拐及び人身売買の罪
(未成年者略取及び誘拐) 第二百二十四条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。 (営利目的等略取及び誘拐) 第二百二十五条 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 (身の代金目的略取等) 第二百二十五条の二 近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。 2 人を略取し又は誘拐した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする。 (所在国外移送目的略取及び誘拐) 第二百二十六条 所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期懲役に処する。 (人身売買) 第二百二十六条の二 人を買い受けた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 2 未成年者を買い受けた者は、三月以上七年以下の懲役に処する。 3 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 4 人を売り渡した者も、前項と同様とする。 5 所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、二年以上の有期懲役に処する。 (被略取者等所在国外移送) 第二百二十六条の三 略取され、誘拐され、又は売買された者を所在国外に移送した者は、二年以上の有期懲役に処する。 (被略取者引渡し等) 第二百二十七条 第二百二十四条、第二百二十五条又は前三条の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。 2 第二百二十五条の二第一項の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され又は誘拐された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。 3 営利、わいせつ又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、又は蔵匿した者は、六月以上七年以下の懲役に処する。 4 第二百二十五条の二第一項の目的で、略取され又は誘拐された者を収受した者は、二年以上の有期懲役に処する。略取され又は誘拐された者を収受した者が近親者その他略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、同様とする。 (未遂罪) 第二百二十八条 第二百二十四条、第二百二十五条、第二百二十五条の二第一項、第二百二十六条から第二百二十六条の三まで並びに前条第一項から第三項まで及び第四項前段の罪の未遂は、罰する。 (解放による刑の減軽) 第二百二十八条の二 第二百二十五条の二又は第二百二十七条第二項若しくは第四項の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。 (身の代金目的略取等予備) 第二百二十八条の三 第二百二十五条の二第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。 (親告罪) 第二百二十九条 第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第三十四章 名誉に対する罪
(名誉毀損)

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀 き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

(公共の利害に関する場合の特例)

第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。

3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

(侮辱)

第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

(親告罪)

第二百三十二条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

2 告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。

第三十五章 信用及び業務に対する罪
(信用毀損及び業務妨害)

第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(威力業務妨害)

第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

(電子計算機損壊等業務妨害) 第二百三十四条の二 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 2 前項の罪の未遂は、罰する。
第三十六章 窃盗及び強盗の罪
(窃盗) 第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (不動産侵奪) 第二百三十五条の二 他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の懲役に処する。 (強盗) 第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。 (強盗予備) 第二百三十七条 強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。 (事後強盗) 第二百三十八条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。 (昏 こん酔強盗) 第二百三十九条 人を昏 こん酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。 (強盗致死傷) 第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。 (強盗・強制性交等及び同致死) 第二百四十一条 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。 2 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。 3 第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。 (他人の占有等に係る自己の財物) 第二百四十二条 自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。 (未遂罪) 第二百四十三条 第二百三十五条から第二百三十六条まで、第二百三十八条から第二百四十条まで及び第二百四十一条第三項の罪の未遂は、罰する。 (親族間の犯罪に関する特例) 第二百四十四条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。 2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 3 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。 (電気) 第二百四十五条 この章の罪については、電気は、財物とみなす。
第三十七章 詐欺及び恐喝の罪
(詐欺) 第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。 (電子計算機使用詐欺) 第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。 (背任) 第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (準詐欺) 第二百四十八条 未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。 (恐喝) 第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。 (未遂罪) 第二百五十条 この章の罪の未遂は、罰する。 (準用) 第二百五十一条 第二百四十二条、第二百四十四条及び第二百四十五条の規定は、この章の罪について準用する。
第三十八章 横領の罪
(横領) 第二百五十二条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。 2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。 (業務上横領) 第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。 (遺失物等横領) 第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 (準用) 第二百五十五条 第二百四十四条の規定は、この章の罪について準用する。
第三十九章 盗品等に関する罪
(盗品譲受け等) 第二百五十六条 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の懲役に処する。 2 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処する。 (親族等の間の犯罪に関する特例) 第二百五十七条 配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。 2 前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
第四十章 毀棄及び隠匿の罪
(公用文書等毀棄) 第二百五十八条 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。 (私用文書等毀棄) 第二百五十九条 権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の懲役に処する。 (建造物等損壊及び同致死傷) 第二百六十条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 (器物損壊等) 第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 (自己の物の損壊等) 第二百六十二条 自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は配偶者居住権が設定されたものを損壊し、又は傷害したときは、前三条の例による。 (境界損壊) 第二百六十二条の二 境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (信書隠匿) 第二百六十三条 他人の信書を隠匿した者は、六月以下の懲役若しくは禁錮又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 (親告罪) 第二百六十四条 第二百五十九条、第二百六十一条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
附 則 (昭和一六年三月一二日法律第六一号) 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム 附 則 (昭和二二年一〇月二六日法律第一二四号) ① この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から、これを施行する。 ② 第二十六条第二項の改正規定は、刑の執行猶予の言渡を受けた者がこの法律施行前に更に罪を犯した場合については、これを適用しない。 ③ 第三十四条ノ二の改正規定は、この法律施行前に刑の言渡又は刑の免除の言渡を受けた者にもこれを適用する。 ④ この法律施行前の行為については、刑法第五十五条、第二百八条第二項、第二百十一条後段、第二百四十四条及び第二百五十七条の改正規定にかかわらず、なお従前の例による。 附 則 (昭和二八年八月一〇日法律第一九五号) 抄 1 この法律の施行期日は、昭和二十八年十二月三十一日までの間において政令で定める。 附 則 (昭和二九年四月一日法律第五七号) 抄 1 この法律は、昭和二十九年八月三十一日までの間において政令で定める日から施行する。但し、刑法第一条第二項の改正規定及び附則第三項の規定は、公布の日から施行する。 2 この法律による改正後の刑法第二十五条ノ二第一項前段の規定は、この法律の施行前に犯された罪については、適用しない。但し、その罪とこの法律の施行後に犯された罪とにつき、刑法第四十七条又は第四十八条第二項の規定を適用して処断すべきときは、この限りでない。 附 則 (昭和三三年四月三〇日法律第一〇七号) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 2 この法律の施行前の行為については、なお従前の例による。 3 罰金等臨時措置法(昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第百五条ノ二、第百九十八条第二項及び第二百八条ノ二第一項の罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。 附 則 (昭和三五年五月一六日法律第八三号) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 2 罰金等臨時措置法(昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第二百六十二条ノ二の罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。 附 則 (昭和三九年六月三〇日法律第一二四号) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 2 この法律の施行前にした行為については、この法律による改正後の刑法第二百二十八条ノ二及び第二百二十九条の規定にかかわらず、なお従前の例による。 附 則 (昭和四三年五月二一日法律第六一号) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 2 この法律による改正後の刑法第四十五条の規定は、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、又は刑を免除する裁判がこの法律の施行前に確定した場合における当該数罪についても、適用する。ただし、当該数罪のすべてがこの法律の施行前に犯されたものであり、かつ、改正後の同条の規定を適用することが改正前の同条の規定を適用するよりも犯人に不利益となるときは、当該数罪については、改正前の同条の規定を適用する。 3 前項の規定は、この法律の施行前に確定した裁判の執行につき従前の例によることを妨げるものではない。 附 則 (昭和五五年四月三〇日法律第三〇号) この法律は、公布の日から施行する。 附 則 (昭和六二年六月二日法律第五二号) 抄 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、第一条中刑法第四条の次に一条を加える改正規定、第二条及び第三条の規定並びに次項の規定及び附則第四項中新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五十三年法律第四十二号)第二条第一項第十一号の改正規定は、国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約又は人質をとる行為に関する国際条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。 (経過措置) 2 刑法第四条の二の規定並びに人質による強要行為等の処罰に関する法律第五条及び暴力行為等処罰に関する法律第一条ノ二第三項の規定(刑法第四条の二に係る部分に限る。)は、前項ただし書に規定する規定の施行の日以後に日本国について効力を生ずる条約並びに戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約、海上にある軍隊の傷者、病者及び難船者の状態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約及び戦時における文民の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約により日本国外において犯したときであつても罰すべきものとされる罪に限り適用する。 (罰金等臨時措置法の適用) 3 罰金等臨時措置法(昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第百六十一条ノ二及び第二百三十四条ノ二の罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。 附 則 (平成三年四月一七日法律第三一号) 抄 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (条例の罰則に関する経過措置) 2 条例の罰則でこの法律の施行の際現に効力を有するものについては、この法律による改正後の刑法第十五条及び第十七条の規定にかかわらず、この法律の施行の日から一年を経過するまでは、なお従前の例による。その期限前にした行為に対してこれらの罰則を適用する場合には、その期限の経過後においても、同様とする。 (罰金の執行猶予の限度に関する経過措置) 3 この法律による改正後の刑法第二十五条の規定は、この法律の施行前にした行為についても、適用する。 附 則 (平成七年五月一二日法律第九一号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律の施行前にした行為の処罰並びに施行前に確定した裁判の効力及びその執行については、なお従前の例による。ただし、この法律による改正前の刑法第二百条、第二百五条第二項、第二百十八条第二項及び第二百二十条第二項の規定の適用については、この限りでない。 2 前項の規定にかかわらず、併合罪として処断すべき罪にこの法律の施行前に犯したものと施行後に犯したものがあるときは、この法律による改正後の刑法(以下この条において「新法」という。)第十条、第十四条、第四十五条から第五十条まで及び第五十三条の規定を適用し、一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れる場合において、これらの罪名に触れる行為にこの法律の施行前のものと施行後のものがあるときは、新法第十条及び第五十四条(同条第二項において適用する第四十九条第二項を含む。)の規定を適用する。 3 前項の規定により同項に規定する新法の規定を適用した後の刑の加重減軽、刑の執行の猶予その他の主刑の適用に関する処理については、新法の規定を適用する。 附 則 (平成一三年七月四日法律第九七号) 抄 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 附 則 (平成一三年一二月五日法律第一三八号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律の施行前にした行為の処罰については、なお従前の例による。 附 則 (平成一三年一二月一二日法律第一五三号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (処分、手続等に関する経過措置) 第四十二条 この法律の施行前に改正前のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。以下この条において同じ。)の規定によってした処分、手続その他の行為であって、改正後のそれぞれの法律の規定に相当の規定があるものは、この附則に別段の定めがあるものを除き、改正後のそれぞれの法律の相当の規定によってしたものとみなす。 (罰則に関する経過措置) 第四十三条 この法律の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 (経過措置の政令への委任) 第四十四条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。 附 則 (平成一五年七月一八日法律第一二二号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律による改正後の刑法第三条の二の規定並びに附則第三条による改正後の暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)第一条ノ二第三項及び附則第四条による改正後の人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和五十三年法律第四十八号)第五条の規定(刑法第三条の二に係る部分に限る。)は、この法律の施行前にした行為については、適用しない。 附 則 (平成一五年八月一日法律第一三八号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (罰則の適用に関する経過措置) 第十四条 この法律の施行前にした行為及び附則第五条の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 附 則 (平成一六年六月一八日法律第一一五号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、第一追加議定書が日本国について効力を生ずる日から施行する。ただし、附則第三条の規定は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 附 則 (平成一六年一二月八日法律第一五六号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (経過措置) 第三条 この法律の施行前にした第一条の規定による改正前の刑法(以下「旧法」という。)第二百四十条の罪に当たる行為の処罰については、なお従前の例による。 第四条 併合罪として処断すべき罪にこの法律の施行前に犯したものと施行後に犯したものがある場合において、これらの罪について刑法第四十七条の規定により併合罪として有期の懲役又は禁錮の加重をするときは、旧法第十四条の規定を適用する。ただし、これらの罪のうちこの法律の施行後に犯したもののみについて第一条の規定による改正後の刑法第十四条の規定を適用して処断することとした場合の刑が、これらの罪のすべてについて旧法第十四条の規定を適用して処断することとした場合の刑より重い刑となるときは、その重い刑をもって処断する。 附 則 (平成一七年五月二五日法律第五〇号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 附 則 (平成一七年六月二二日法律第六六号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (調整規定) 第二条 この法律の施行の日が犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律の施行の日前である場合には、第一条のうち刑法第三条第十二号及び第三条の二第五号の改正規定中「第三条第十二号」とあるのは「第三条第十一号」とし、第四条のうち組織的犯罪処罰法第三条第一項第八号の改正規定中「第三条第一項第八号」とあるのは「第三条第一項第四号」とする。 (罰則に関する経過措置) 第十条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 附 則 (平成一八年五月八日法律第三六号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 次に掲げる罰金又は科料の執行(労役場留置の執行を含む。)については、第一条の規定による改正後の刑法第十八条の規定にかかわらず、なお従前の例による。 一 この法律の施行前にした行為について科せられた罰金又は科料 二 刑法第四十八条第二項の規定により併合罪として処断された罪にこの法律の施行前に犯したものと施行後に犯したものがある場合において、これらの罪に当たる行為について科せられた罰金 附 則 (平成一九年五月二三日法律第五四号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律の施行前にした行為の処罰については、なお従前の例による。 附 則 (平成二二年四月二七日法律第二六号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律の施行前に確定した刑の時効の期間については、第一条の規定による改正後の刑法第三十一条、第三十二条及び第三十四条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。 附 則 (平成二三年六月二四日法律第七四号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第八条 施行日前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 附 則 (平成二五年六月一九日法律第四九号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (経過措置) 第二条 第一条の規定による改正後の刑法第二十七条の二第一項の規定は、この法律の施行前にした行為についても、適用する。 附 則 (平成二五年一一月二七日法律第八六号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (罰則の適用等に関する経過措置) 第十四条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 第十五条 前条の規定によりなお従前の例によることとされる附則第二条の規定による改正前の刑法第二百十一条第二項の罪は、附則第三条の規定による改正後の刑事訴訟法第三百十六条の三十三第一項の規定の適用については同項第四号に掲げる罪と、附則第四条の規定による改正後の少年法第二十二条の四第一項の規定の適用については同項第三号に掲げる罪とみなす。 附 則 (平成二八年六月三日法律第五四号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。 一 略 二 第一条(刑事訴訟法第九十条、第百五十一条及び第百六十一条の改正規定に限る。)、第三条、第五条及び第八条の規定並びに附則第三条及び第五条の規定 公布の日から起算して二十日を経過した日 附 則 (平成二九年六月二一日法律第六七号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。 一 略 二 附則第五条第二項 刑法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第七十二号。同条において「刑法一部改正法」という。)の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日 (調整規定) 第五条 刑法一部改正法の施行の日がこの法律の施行の日後となる場合には、刑法一部改正法の施行の日の前日までの間における新組織的犯罪処罰法別表第三第二号カの規定の適用については、同号カ中「、強制性交等」とあるのは「、強姦 かん」と、「準強制性交等」とあるのは「準強姦」とする。 2 前項の場合においては、刑法一部改正法のうち刑法第三条の改正規定中「同条第十二号」とあるのは「同条第十三号」と、「同条第十三号」とあるのは「同条第十四号」とし、刑法一部改正法附則第六条の規定は、適用しない。 附 則 (平成二九年六月二三日法律第七二号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 (経過措置) 第二条 この法律の施行前にした行為の処罰については、なお従前の例による。 2 この法律による改正前の刑法(以下「旧法」という。)第百八十条又は第二百二十九条本文の規定により告訴がなければ公訴を提起することができないとされていた罪(旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇 ほう助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪を除く。)であってこの法律の施行前に犯したものについては、この法律の施行の際既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き、この法律の施行後は、告訴がなくても公訴を提起することができる。 3 旧法第二百二十九条本文の規定により告訴がなければ公訴を提起することができないとされていた罪(旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪を除く。)であってこの法律の施行前に犯したものについてこの法律の施行後にする告訴は、略取され、誘拐され、又は売買された者が犯人と婚姻をしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、この法律の施行の際既に附則第四条の規定による改正前の刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百三十五条第二項に規定する期間が経過しているときは、この限りでない。 4 旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪であってこの法律の施行前に犯したものについてこの法律の施行後にする告訴の効力については、なお従前の例による。 (検討) 第九条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。 附 則 (平成三〇年七月一三日法律第七二号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。 一~三 略 四 第二条並びに附則第十条、第十三条、第十四条、第十七条、第十八条及び第二十三条から第二十六条までの規定 公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日 五 略 (政令への委任) 第三十一条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(旧)刑法
明治40年4月24日法律第45号(明治41年10月1日施行版)
第一編 総則
第一章 法例

第一条 本法ハ何人ヲ問ハス帝国内ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス

2 帝国外ニ在ル帝国船舶内ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ付キ亦同シ

第二条 本法ハ何人ヲ問ハス帝国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス 一 第七十三条乃至第七十六条ノ罪 二 第七十七条乃至第七十九条ノ罪 三 第八十一条乃至第八十九条ノ罪 四 第百四十八条ノ罪及ヒ其未遂罪 五 第百五十四条、第百五十五条、第百五十七条及ヒ第百五十八条ノ罪 六 第百六十二条及ヒ第百六十三条ノ罪 七 第百六十四条乃至第百六十六条ノ罪及ヒ第百六十四条第二項、第百六十五条第二項、第百六十六条第二項ノ未遂罪 第三条 本法ハ帝国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル帝国臣民ニ之ヲ適用ス 一 第百八条、第百九条第一項ノ罪、第百八条、第百九条第一項ノ例ニ依リ処断ス可キ罪及ヒ此等ノ罪ノ未遂罪 二 第百十九条ノ罪 三 第百五十九条乃至第百六十一条ノ罪 四 第百六十七条ノ罪及ヒ同条第二項ノ未遂罪 五 第百七十六条乃至第百七十九条、第百八十一条及ヒ第百八十四条ノ罪 六 第百九十九条、第二百条ノ罪及ヒ其未遂罪 七 第二百四条及ヒ第二百五条ノ罪 八 第二百十四条乃至第二百十六条ノ罪 九 第二百十八条ノ罪及ヒ同条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル罪 十 第二百二十条及ヒ第二百二十一条ノ罪 十一 第二百二十四条乃至第二百二十八条ノ罪 十二 第二百三十条ノ罪 十三 第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条乃至第二百四十一条及ヒ第二百四十三条ノ罪 十四 第二百四十六条乃至第二百五十条ノ罪 十五 第二百五十三条ノ罪 十六 第二百五十六条第二項ノ罪 2 帝国外ニ於テ帝国臣民ニ対シ前項ノ罪ヲ犯シタル外国人ニ付キ亦同シ 第四条 本法ハ帝国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル帝国ノ公務員ニ之ヲ適用ス 一 第百一条ノ罪及ヒ其未遂罪 二 第百五十六条ノ罪 三 第百九十三条、第百九十五条第二項、第百九十七条ノ罪及ヒ第百九十五条第二項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル罪 第五条 外国ニ於テ確定裁判ヲ受ケタル者ト雖モ同一行為ニ付キ更ニ処罰スルコトヲ妨ケス但犯人既ニ外国ニ於テ言渡サレタル刑ノ全部又ハ一部ノ執行ヲ受ケタルトキハ刑ノ執行ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得 第六条 犯罪後ノ法律ニ因リ刑ノ変更アリタルトキハ其軽キモノヲ適用ス 第七条 本法ニ於テ公務員ト称スルハ官吏、公吏、法令ニ依リ公務ニ従事スル議員、委員其他ノ職員ヲ謂フ 2 公務所ト称スルハ公務員ノ職務ヲ行フ所ヲ謂フ 第八条 本法ノ総則ハ他ノ法令ニ於テ刑ヲ定メタルモノニ亦之ヲ適用ス但其法令ニ特別ノ規定アルトキハ此限ニ在ラス 第二章 刑 第九条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及ヒ科料ヲ主刑トシ没収ヲ附加刑トス 第十条 主刑ノ軽重ハ前条記載ノ順序ニ依ル但無期禁錮ト有期懲役トハ禁錮ヲ以テ重シトシ有期禁錮ノ長期有期懲役ノ長期ノ二倍ヲ超ユルトキハ禁錮ヲ以テ重シトス 2 同種ノ刑ハ長期ノ長キモノ又ハ多額ノ多キモノヲ以テ重シトシ長期又ハ多額ノ同シキモノハ其短期ノ長キモノ又ハ寡額ノ多キモノヲ以テ重シトス 3 二個以上ノ死刑又ハ長期若クハ多額及ヒ短期若クハ寡額ノ同シキ同種ノ刑ハ犯情ニ依リ其軽重ヲ定ム 第十一条 死刑ハ監獄内ニ於テ絞首シテ之ヲ執行ス 2 死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ其執行ニ至ルマテ之ヲ監獄ニ拘置ス 第十二条 懲役ハ無期及ヒ有期トシ有期懲役ハ一月以上十五年以下トス 2 懲役ハ監獄ニ拘置シ定役ニ服ス 第十三条 禁錮ハ無期及ヒ有期トシ有期禁錮ハ一月以上十五年以下トス 2 禁錮ハ監獄ニ拘置ス 第十四条 有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ加重スル場合ニ於テハ二十年ニ至ルコトヲ得之ヲ減軽スル場合ニ於テハ一月以下ニ降スコトヲ得 第十五条 罰金ハ二十円以上トス但之ヲ減軽スル場合ニ於テハ二十円以下ニ降スコトヲ得 第十六条 拘留ハ一日以上三十日未満トシ拘留場ニ拘置ス 第十七条 科料ハ十銭以上二十円未満トス 第十八条 罰金ヲ完納スルコト能ハサル者ハ一日以上一年以下ノ期間之ヲ労役場ニ留置ス 2 科料ヲ完納スルコト能ハサル者ハ一日以上三十日以下ノ期間之ヲ労役場ニ留置ス 3 科料ヲ併科シタル場合ト雖モ留置ノ期間ハ六十日ヲ超ユルコトヲ得ス 4 罰金又ハ科料ノ言渡ヲ為ストキハ其言渡ト共ニ罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサル場合ニ於ケル留置ノ期間ヲ定メ之ヲ言渡ス可シ 5 罰金ニ付テハ裁判確定後三十日内科料ニ付テハ裁判確定後十日内ハ本人ノ承諾アルニ非サレハ留置ノ執行ヲ為スコトヲ得ス 6 罰金又ハ科料ノ言渡ヲ受ケタル者其幾分ヲ納ムルトキハ罰金又ハ科料ノ全額ト留置日数トノ割合ニ従ヒ其金額ニ相当スル日数ヲ控除シテ之ヲ留置ス 7 留置期間内罰金又ハ科料ヲ納ムルトキハ前項ノ割合ヲ以テ残日数ニ充ツ 8 留置一日ノ割合ニ満タサル金額ハ之ヲ納ムルコトヲ得ス 第十九条 左ニ記載シタル物ハ之ヲ没収スルコトヲ得 一 犯罪行為ヲ組成シタル物 二 犯罪行為ニ供シ又ハ供セントシタル物 三 犯罪行為ヨリ生シ又ハ之ニ因リ得タル物 2 没収ハ其物犯人以外ノ者ニ属セサルトキニ限ル 第二十条 拘留又ハ科料ノミニ該ル罪ニ付テハ特別ノ規定アルニ非サレハ没収ヲ科スルコトヲ得ス但前条第一項第一号ニ記載シタル物ノ没収ハ此限ニ在ラス 第二十一条 未決勾留ノ日数ハ其全部又ハ一部ヲ本刑ニ算入スルコトヲ得 第三章 期間計算 第二十二条 期間ヲ定ムルニ月又ハ年ヲ以テシタルトキハ暦ニ従ヒテ之ヲ計算ス 第二十三条 刑期ハ裁判確定ノ日ヨリ起算ス 2 拘禁セラレサル日数ハ裁判確定後ト雖モ刑期ニ算入セス 第二十四条 受刑ノ初日ハ時間ヲ論セス全一日トシテ之ヲ計算ス時効期間ノ初日亦同シ 2 放免ハ刑期終了ノ翌日ニ於テ之ヲ行フ 第四章 刑ノ執行猶予 第二十五条 左ニ記載シタル者二年以下ノ懲役又ハ禁錮ノ言渡ヲ受ケタルトキハ情状ニ因リ裁判確定ノ日ヨリ一年以上五年以下ノ期間内其執行ヲ猶予スルコトヲ得 一 前ニ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコトナキ者 二 前ニ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコトアルモ其執行ヲ終リ又ハ其執行ノ免除ヲ得タル日ヨリ七年以内ニ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコトナキ者 第二十六条 左ニ記載シタル場合ニ於テハ刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消ス可シ 一 猶予ノ期間内更ニ罪ヲ犯シ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキ 二 猶予ノ言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキ 三 前条第二号ニ記載シタル者ヲ除ク外猶予ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコト発覚シタルトキ 第二十七条 刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消サルルコトナクシテ猶予ノ期間ヲ経過シタルトキハ刑ノ言渡ハ其効力ヲ失フ 第五章 仮出獄 第二十八条 懲役又ハ禁錮ニ処セラレタル者改悛ノ状アルトキハ有期刑ニ付テハ其刑期三分ノ一無期刑ニ付テハ十年ヲ経過シタル後行政官庁ノ処分ヲ以テ仮ニ出獄ヲ許スコトヲ得 第二十九条 左ニ記載シタル場合ニ於テハ仮出獄ノ処分ヲ取消スコトヲ得 一 仮出獄中更ニ罪ヲ犯シ罰金以上ノ刑ニ処セラレタルトキ 二 仮出獄前ニ犯シタル他ノ罪ニ付キ罰金以上ノ刑ニ処セラレタルトキ 三 仮出獄前他ノ罪ニ付キ罰金以上ノ刑ニ処セラレタル者ニシテ其刑ノ執行ヲ為ス可キトキ 四 仮出獄取締規則ニ違背シタルトキ 2 仮出獄ノ処分ヲ取消シタルトキハ出獄中ノ日数ハ刑期ニ算入セス 第三十条 拘留ニ処セラレタル者ハ情状ニ因リ何時ニテモ行政官庁ノ処分ヲ以テ仮ニ出場ヲ許スコトヲ得 2 罰金又ハ科料ヲ完納スルコト能ハサルニ因リ留置セラレタル者亦同シ 第六章 時効 第三十一条 刑ノ言渡ヲ受ケタル者ハ時効ニ因リ其執行ノ免除ヲ得 第三十二条 時効ハ刑ノ言渡確定シタル後左ノ期間内其執行ヲ受ケサルニ因リ完成ス 一 死刑ハ三十年 二 無期ノ懲役又ハ禁錮ハ二十年 三 有期ノ懲役又ハ禁錮ハ十年以上ハ十五年、三年以上ハ十年、三年未満ハ五年 四 罰金ハ三年 五 拘留、科料及ヒ没収ハ一年 第三十三条 時効ハ法令ニ依リ執行ヲ猶予シ又ハ之ヲ停止シタル期間内ハ進行セス 第三十四条 時効ハ刑ノ執行ニ付キ犯人ヲ逮捕シタルニ因リ之ヲ中断ス 2 罰金、科料及ヒ没収ノ時効ハ執行行為ヲ為シタルニ因リ之ヲ中断ス 第七章 犯罪ノ不成立及ヒ刑ノ減免 第三十五条 法令又ハ正当ノ業務ニ因リ為シタル行為ハ之ヲ罰セス 第三十六条 急迫不正ノ侵害ニ対シ自己又ハ他人ノ権利ヲ防衛スル為メ已ムコトヲ得サルニ出テタル行為ハ之ヲ罰セス 2 防衛ノ程度ヲ超エタル行為ハ情状ニ因リ其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得 第三十七条 自己又ハ他人ノ生命、身体、自由若クハ財産ニ対スル現在ノ危難ヲ避クル為メ已ムコトヲ得サルニ出テタル行為ハ其行為ヨリ生シタル害其避ケントシタル害ノ程度ヲ超エサル場合ニ限リ之ヲ罰セス但其程度ヲ超エタル行為ハ情状ニ因リ其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得 2 前項ノ規定ハ業務上特別ノ義務アル者ニハ之ヲ適用セス 第三十八条 罪ヲ犯ス意ナキ行為ハ之ヲ罰セス但法律ニ特別ノ規定アル場合ハ此限ニ在ラス 2 罪本重カル可クシテ犯ストキ知ラサル者ハ其重キニ従テ処断スルコトヲ得ス 3 法律ヲ知ラサルヲ以テ罪ヲ犯ス意ナシト為スコトヲ得ス但情状ニ因リ其刑ヲ減軽スルコトヲ得 第三十九条 心神喪失者ノ行為ハ之ヲ罰セス 2 心神耗弱者ノ行為ハ其刑ヲ減軽ス 第四十条 瘖唖者ノ行為ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ減軽ス 第四十一条 十四歳ニ満タサル者ノ行為ハ之ヲ罰セス 第四十二条 罪ヲ犯シ未タ官ニ発覚セサル前自首シタル者ハ其刑ヲ減軽スルコトヲ得 2 告訴ヲ待テ論ス可キ罪ニ付キ告訴権ヲ有スル者ニ首服シタル者亦同シ 第八章 未遂罪 第四十三条 犯罪ノ実行ニ著手シ之ヲ遂ケサル者ハ其刑ヲ減軽スルコトヲ得但自己ノ意思ニ因リ之ヲ止メタルトキハ其刑ヲ減軽又ハ免除ス 第四十四条 未遂罪ヲ罰スル場合ハ各本条ニ於テ之ヲ定ム 第九章 併合罪 第四十五条 確定裁判ヲ経サル数罪ヲ併合罪トス若シ或罪ニ付キ確定裁判アリタルトキハ止タ其罪ト其裁判確定前ニ犯シタル罪トヲ併合罪トス 第四十六条 併合罪中其一罪ニ付キ死刑ニ処ス可キトキハ他ノ刑ヲ科セス但没収ハ此限ニ在ラス 2 其一罪ニ付キ無期ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス可キトキ亦他ノ刑ヲ科セス但罰金、科料及ヒ没収ハ此限ニ在ラス 第四十七条 併合罪中二個以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス可キ罪アルトキハ其最モ重キ罪ニ付キ定メタル刑ノ長期ニ其半数ヲ加ヘタルモノヲ以テ長期トス但各罪ニ付キ定メタル刑ノ長期ヲ合算シタルモノニ超ユルコトヲ得ス 第四十八条 罰金ト他ノ刑トハ之ヲ併科ス但第四十六条第一項ノ場合ハ此限ニ在ラス 2 二個以上ノ罰金ハ各罪ニ付キ定メタル罰金ノ合算額以下ニ於テ処断ス 第四十九条 併合罪中重キ罪ニ没収ナシト雖モ他ノ罪ニ没収アルトキハ之ヲ附加スルコトヲ得 2 二個以上ノ没収ハ之ヲ併科ス 第五十条 併合罪中既ニ裁判ヲ経タル罪ト未タ裁判ヲ経サル罪トアルトキハ更ニ裁判ヲ経サル罪ニ付キ処断ス 第五十一条 併合罪ニ付キ二個以上ノ裁判アリタルトキハ其刑ヲ併セテ之ヲ執行ス但死刑ヲ執行ス可キトキハ没収ヲ除ク外他ノ刑ヲ執行セス無期ノ懲役又ハ禁錮ヲ執行ス可キトキハ罰金、科料及ヒ没収ヲ除ク外他ノ刑ヲ執行セス有期ノ懲役又ハ禁錮ノ執行ハ其最モ重キ罪ニ付キ定メタル刑ノ長期ニ其半数ヲ加ヘタルモノニ超ユルコトヲ得ス 第五十二条 併合罪ニ付キ処断セラレタル者或罪ニ付キ大赦ヲ受ケタル場合ニ於テハ特ニ大赦ヲ受ケサル罪ニ付キ刑ヲ定ム 第五十三条 拘留又ハ科料ト他ノ刑トハ之ヲ併科ス但第四十六条ノ場合ハ此限ニ在ラス 2 二個以上ノ拘留又ハ科料ハ之ヲ併科ス 第五十四条 一個ノ行為ニシテ数個ノ罪名ニ触レ又ハ犯罪ノ手段若クハ結果タル行為ニシテ他ノ罪名ニ触ルルトキハ其最モ重キ刑ヲ以テ処断ス 2 第四十九条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ適用ス 第五十五条 連続シタル数個ノ行為ニシテ同一ノ罪名ニ触ルルトキハ一罪トシテ之ヲ処断ス 第十章 累犯 第五十六条 懲役ニ処セラレタル者其執行ヲ終リ又ハ執行ノ免除アリタル日ヨリ五年内ニ更ニ罪ヲ犯シ有期懲役ニ処ス可キトキハ之ヲ再犯トス 2 懲役ニ該ル罪ト同質ノ罪ニ因リ死刑ニ処セラレタル者其執行ノ免除アリタル日ヨリ又ハ減刑ニ因リ懲役ニ減軽セラレ其執行ヲ終リ若クハ執行ノ免除アリタル日ヨリ前項ノ期間内ニ更ニ罪ヲ犯シ有期懲役ニ処ス可キトキ亦同シ 3 併合罪ニ付キ処断セラレタル者其併合罪中懲役ニ処ス可キ罪アリタルトキハ其罪最重ノモノニ非スト雖モ再犯例ノ適用ニ付テハ懲役ニ処セラレタルモノト看做ス 第五十七条 再犯ノ刑ハ其罪ニ付キ定メタル懲役ノ長期ノ二倍以下トス 第五十八条 裁判確定後再犯者タルコトヲ発見シタルトキハ前条ノ規定ニ従ヒ加重ス可キ刑ヲ定ム 2 懲役ノ執行ヲ終リタル後又ハ其執行ノ免除アリタル後発見セラレタル者ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セス 第五十九条 三犯以上ノ者ト雖モ仍ホ再犯ノ例ニ同シ 第十一章 共犯 第六十条 二人以上共同シテ犯罪ヲ実行シタル者ハ皆正犯トス 第六十一条 人ヲ教唆シテ犯罪ヲ実行セシメタル者ハ正犯ニ準ス 2 教唆者ヲ教唆シタル者亦同シ 第六十二条 正犯ヲ幇助シタル者ハ従犯トス 2 従犯ヲ教唆シタル者ハ従犯ニ準ス 第六十三条 従犯ノ刑ハ正犯ノ刑ニ照シテ減軽ス 第六十四条 拘留又ハ科料ノミニ処ス可キ罪ノ教唆者及ヒ従犯ハ特別ノ規定アルニ非サレハ之ヲ罰セス 第六十五条 犯人ノ身分ニ因リ構成ス可キ犯罪行為ニ加功シタルトキハ其身分ナキ者ト雖モ仍ホ共犯トス 2 身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキハ其身分ナキ者ニハ通常ノ刑ヲ科ス 第十二章 酌量減軽 第六十六条 犯罪ノ情状憫諒ス可キモノハ酌量シテ其刑ヲ減軽スルコトヲ得 第六十七条 法律ニ依リ刑ヲ加重又ハ減軽スル場合ト雖モ仍ホ酌量減軽ヲ為スコトヲ得 第十三章 加減例 第六十八条 法律ニ依リ刑ヲ減軽ス可キ一個又ハ数個ノ原由アルトキハ左ノ例ニ依ル 一 死刑ヲ減軽ス可キトキハ無期又ハ十年以上ノ懲役若クハ禁錮トス 二 無期ノ懲役又ハ禁錮ヲ減軽ス可キトキハ七年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮トス 三 有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ減軽ス可キトキハ其刑期ノ二分ノ一ヲ減ス 四 罰金ヲ減軽ス可キトキハ其金額ノ二分ノ一ヲ減ス 五 拘留ヲ減軽ス可キトキハ其長期ノ二分ノ一ヲ減ス 六 科料ヲ減軽ス可キトキハ其多額ノ二分ノ一ヲ減ス 第六十九条 法律ニ依リ刑ヲ減軽ス可キ場合ニ於テ各本条ニ二個以上ノ刑名アルトキハ先ツ適用ス可キ刑ヲ定メ其刑ヲ減軽ス 第七十条 懲役、禁錮又ハ拘留ヲ減軽スルニ因リ一日ニ満タサル時間ヲ剰ストキハ之ヲ除棄ス 2 罰金又ハ科料ヲ減軽スルニ因リ一銭ニ満タサル金額ヲ剰ストキ亦同シ 第七十一条 酌量減軽ヲ為ス可キトキ亦第六十八条及ヒ前条ノ例ニ依ル 第七十二条 同時ニ刑ヲ加重減軽ス可キトキハ左ノ順序ニ依ル 一 再犯加重 二 法律上ノ減軽 三 併合罪ノ加重 四 酌量減軽 第二編 罪 第一章 皇室ニ対スル罪 第七十三条 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス 第七十四条 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 神宮又ハ皇陵ニ対シ不敬ノ行為アリタル者亦同シ 第七十五条 皇族ニ対シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ処シ危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期懲役ニ処ス 第七十六条 皇族ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ二月以上四年以下ノ懲役ニ処ス 第二章 内乱ニ関スル罪 第七十七条 政府ヲ顛覆シ又ハ邦土ヲ僭窃シ其他朝憲ヲ紊乱スルコトヲ目的トシテ暴動ヲ為シタル者ハ内乱ノ罪トシ左ノ区別ニ従テ処断ス 一 首魁ハ死刑又ハ無期禁錮ニ処ス 二 謀議ニ参与シ又ハ群衆ノ指揮ヲ為シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ禁錮ニ処シ其他諸般ノ職務ニ従事シタル者ハ一年以上十年以下ノ禁錮ニ処ス 三 附和随行シ其他単ニ暴動ニ干与シタル者ハ三年以下ノ禁錮ニ処ス 2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス但前項第三号ニ記載シタル者ハ此限ニ在ラス 第七十八条 内乱ノ予備又ハ陰謀ヲ為シタル者ハ一年以上十年以下ノ禁錮ニ処ス 第七十九条 兵器、金穀ヲ資給シ又ハ其他ノ行為ヲ以テ前二条ノ罪ヲ幇助シタル者ハ七年以下ノ禁錮ニ処ス 第八十条 前二条ノ罪ヲ犯スト雖モ未タ暴動ニ至ラサル前自首シタル者ハ其刑ヲ免除ス 第三章 外患ニ関スル罪 第八十一条 外国ニ通謀シテ帝国ニ対シ戦端ヲ開カシメ又ハ敵国ニ与シテ帝国ニ抗敵シタル者ハ死刑ニ処ス 第八十二条 要塞、陣営、軍隊、艦船其他軍用ニ供スル場所又ハ建造物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ死刑ニ処ス 2 兵器、弾薬其他軍用ニ供スル物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス 第八十三条 敵国ヲ利スル為メ要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬、汽車、電車、鉄道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ物ヲ損壊シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス 第八十四条 帝国ノ軍用ニ供セサル兵器、弾薬其他直接ニ戦闘ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 第八十五条 敵国ノ為メニ間諜ヲ為シ又ハ敵国ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス 2 軍事上ノ機密ヲ敵国ニ漏泄シタル者亦同シ 第八十六条 前五条ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵国ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘ又ハ帝国ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 第八十七条 前六条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第八十八条 第八十一条乃至第八十六条ニ記載シタル罪ノ予備又ハ陰謀ヲ為シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第八十九条 本章ノ規定ハ戦時同盟国ニ対スル行為ニ亦之ヲ適用ス 第四章 国交ニ関スル罪 第九十条 帝国ニ滞在スル外国ノ君主又ハ大統領ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 帝国ニ滞在スル外国ノ君主又ハ大統領ニ対シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス但外国政府ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス 第九十一条 帝国ニ派遣セラレタル外国ノ使節ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 帝国ニ派遣セラレタル外国ノ使節ニ対シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス但被害者ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス 第九十二条 外国ニ対シ侮辱ヲ加フル目的ヲ以テ其国ノ国旗其他ノ国章ヲ損壊、除去又ハ汚穢シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス但外国政府ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス 第九十三条 外国ニ対シ私ニ戦闘ヲ為ス目的ヲ以テ其予備又ハ陰謀ヲ為シタル者ハ三月以上五年以下ノ禁錮ニ処ス但自首シタル者ハ其刑ヲ免除ス 第九十四条 外国交戦ノ際局外中立ニ関スル命令ニ違背シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス 第五章 公務ノ執行ヲ妨害スル罪 第九十五条 公務員ノ職務ヲ執行スルニ当リ之ニ対シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 2 公務員ヲシテ或処分ヲ為サシメ若クハ為ササラシムル為メ又ハ其職ヲ辞セシムル為メ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者亦同シ 第九十六条 公務員ノ施シタル封印又ハ差押ノ標示ヲ損壊シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ封印又ハ標示ヲ無効タラシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス 第六章 逃走ノ罪 第九十七条 既決、未決ノ囚人逃走シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ処ス 第九十八条 既決、未決ノ囚人又ハ勾引状ノ執行ヲ受ケタル者拘禁場又ハ械具ヲ損壊シ若クハ暴行、脅迫ヲ為シ又ハ二人以上通謀シテ逃走シタルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第九十九条 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ奪取シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第百条 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ逃走セシムル目的ヲ以テ器具ヲ給与シ其他逃走ヲ容易ナラシム可キ行為ヲ為シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ目的ヲ以テ暴行又ハ脅迫ヲ為シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第百一条 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ看守又ハ護送スル者被拘禁者ヲ逃走セシメタルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第百二条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第七章 犯人蔵匿及ヒ証憑湮滅ノ罪 第百三条 罰金以上ノ刑ニ該ル罪ヲ犯シタル者又ハ拘禁中逃走シタル者ヲ蔵匿シ又ハ隠避セシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス 第百四条 他人ノ刑事被告事件ニ関スル証憑ヲ湮滅シ又ハ偽造、変造シ若クハ偽造、変造ノ証憑ヲ使用シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス 第百五条 本章ノ罪ハ犯人又ハ逃走者ノ親族ニシテ犯人又ハ逃走者ノ利益ノ為メニ犯シタルトキハ之ヲ罰セス 第八章 騒擾ノ罪 第百六条 多衆聚合シテ暴行又ハ脅迫ヲ為シタル者ハ騒擾ノ罪ト為シ左ノ区別ニ従テ処断ス 一 首魁ハ一年以上十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 二 他人ヲ指揮シ又ハ他人ニ率先シテ勢ヲ助ケタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 三 附和随行シタル者ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 第百七条 暴行又ハ脅迫ヲ為ス為メ多衆聚合シ当該公務員ヨリ解散ノ命令ヲ受クルコト三回以上ニ及フモ仍ホ解散セサルトキハ首魁ハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処シ其他ノ者ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 第九章 放火及ヒ失火ノ罪 第百八条 火ヲ放テ現ニ人ノ住居ニ使用シ又ハ人ノ現在スル建造物、汽車、電車、艦船若クハ鉱坑ヲ焼燬シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス 第百九条 火ヲ放テ現ニ人ノ住居ニ使用セス又ハ人ノ現在セサル建造物、艦船若クハ鉱坑ヲ焼燬シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 2 前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス但公共ノ危険ヲ生セサルトキハ之ヲ罰セス 第百十条 火ヲ放テ前二条ニ記載シタル以外ノ物ヲ焼燬シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ一年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 第百十一条 第百九条第二項又ハ前条第二項ノ罪ヲ犯シ因テ第百八条又ハ第百九条第一項ニ記載シタル物ニ延焼シタルトキハ三月以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 前条第二項ノ罪ヲ犯シ因テ前条第一項ニ記載シタル物ニ延焼シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ処ス 第百十二条 第百八条及ヒ第百九条第一項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百十三条 第百八条又ハ第百九条第一項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其予備ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス但情状ニ因リ其刑ヲ免除スルコトヲ得 第百十四条 火災ノ際鎮火用ノ物ヲ隠匿又ハ損壊シ若クハ其他ノ方法ヲ以テ鎮火ヲ妨害シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第百十五条 第百九条第一項及ヒ第百十条第一項ニ記載シタル物自己ノ所有ニ係ルト雖モ差押ヲ受ケ、物権ヲ負担シ又ハ賃貸シ若クハ保険ニ付シタルモノヲ焼燬シタルトキハ他人ノ物ヲ焼燬シタル者ノ例ニ同シ 第百十六条 火ヲ失シテ第百八条ニ記載シタル物又ハ他人ノ所有ニ係ル第百九条ニ記載シタル物ヲ焼燬シタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス 2 火ヲ失シテ自己ノ所有ニ係ル第百九条ニ記載シタル物又ハ第百十条ニ記載シタル物ヲ焼燬シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者亦同シ 第百十七条 火薬、汽缶其他激発ス可キ物ヲ破裂セシメテ第百八条ニ記載シタル物又ハ他人ノ所有ニ係ル第百九条ニ記載シタル物ヲ損壊シタル者ハ放火ノ例ニ同シ自己ノ所有ニ係ル第百九条ニ記載シタル物又ハ第百十条ニ記載シタル物ヲ損壊シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者亦同シ 2 前項ノ行為過失ニ出テタルトキハ失火ノ例ニ同シ 第百十八条 瓦斯、電気又ハ蒸汽ヲ漏出若クハ流出セシメ又ハ之ヲ遮断シ因テ人ノ生命、身体又ハ財産ニ危険ヲ生セシメタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 2 瓦斯、電気又ハ蒸汽ヲ漏出若クハ流出セシメ又ハ之ヲ遮断シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第十章 溢水及ヒ水利ニ関スル罪 第百十九条 溢水セシメテ現ニ人ノ住居ニ使用シ又ハ人ノ現在スル建造物、汽車、電車若クハ鉱坑ヲ浸害シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役ニ処ス 第百二十条 溢水セシメテ前条ニ記載シタル以外ノ物ヲ浸害シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 浸害シタル物自己ノ所有ニ係ルトキハ差押ヲ受ケ、物権ヲ負担シ又ハ賃貸シ若クハ保険ニ付シタル場合ニ限リ前項ノ例ニ依ル 第百二十一条 水害ノ際防水用ノ物ヲ隠匿又ハ損壊シ若クハ其他ノ方法ヲ以テ水防ヲ妨害シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第百二十二条 過失ニ因リ溢水セシメテ第百十九条ニ記載シタル物ヲ浸害シタル者又ハ第百二十条ニ記載シタル物ヲ浸害シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス 第百二十三条 堤防ヲ決潰シ、水閘ヲ破壊シ其他水利ノ妨害ト為ル可キ行為又ハ溢水セシム可キ行為ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス 第十一章 往来ヲ妨害スル罪 第百二十四条 陸路、水路又ハ橋梁ヲ損壊又ハ壅塞シテ往来ノ妨害ヲ生セシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス 2 前項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第百二十五条 鉄道又ハ其標識ヲ損壊シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ汽車又ハ電車ノ往来ノ危険ヲ生セシメタル者ハ二年以下ノ有期懲役ニ処ス 2 灯台又ハ浮標ヲ損壊シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ艦船ノ往来ノ危険ヲ生セシメタル者亦同シ 第百二十六条 人ノ現在スル汽車又ハ電車ヲ顛覆又ハ破壊シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 2 人ノ現在スル艦船ヲ覆没又ハ破壊シタル者亦同シ 3 前二項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス 第百二十七条 第百二十五条ノ罪ヲ犯シ因テ汽車又ハ電車ノ顛覆若クハ破壊又ハ艦船ノ覆没若クハ破壊ヲ致シタル者亦前条ノ例ニ同シ 第百二十八条 第百二十四条第一項、第百二十五条及ヒ第百二十六条第一項、第二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百二十九条 過失ニ因リ汽車、電車又ハ艦船ノ往来ノ危険ヲ生セシメ又ハ汽車、電車ノ顛覆若クハ破壊又ハ艦船ノ覆没若クハ破壊ヲ致シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス 2 其業務ニ従事スル者前項ノ罪ヲ犯シタルトキハ三年以下ノ禁錮又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス 第十二章 住居ヲ侵ス罪 第百三十条 故ナク人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若クハ艦船ニ侵入シ又ハ要求ヲ受ケテ其場所ヨリ退去セサル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 第百三十一条 故ナク皇居、禁苑、離宮又ハ行在所ニ侵入シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 神宮又ハ皇陵ニ侵入シタル者亦同シ 第百三十二条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第十三章 秘密ヲ侵ス罪 第百三十三条 故ナク封緘シタル信書ヲ開披シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス 第百三十四条 医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁護人、公証人又ハ此等ノ職ニ在リシ者故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 2 宗教若クハ祷祀ノ職ニ在ル者又ハ此等ノ職ニ在リシ者故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキ亦同シ 第百三十五条 本章ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス 第十四章 阿片煙ニ関スル罪 第百三十六条 阿片煙ヲ輸入、製造又ハ販売シ若クハ販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第百三十七条 阿片煙ヲ吸食スル器具ヲ輸入、製造又ハ販売シ若クハ販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第百三十八条 税関官吏阿片煙又ハ阿片煙吸食ノ器具ヲ輸入シ又ハ其輸入ヲ許シタルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第百三十九条 阿片煙ヲ吸食シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 阿片煙ヲ吸食スル為メ房室ヲ給与シテ利ヲ図リタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第百四十条 阿片煙又ハ阿片煙吸食ノ器具ヲ所持シタル者ハ一年以下ノ懲役ニ処ス 第百四十一条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第十五章 飲料水ニ関スル罪 第百四十二条 人ノ飲料ニ供スル浄水ヲ汚穢シ因テ之ヲ用フルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 第百四十三条 水道ニ由リ公衆ニ供給スル飲料ノ浄水又ハ其水源ヲ汚穢シ因テ之ヲ用フルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第百四十四条 人ノ飲料ニ供スル浄水ニ毒物其他人ノ健康ヲ害ス可キ物ヲ混入シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 第百四十五条 前三条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第百四十六条 水道ニ由リ公衆ニ供給スル飲料ノ浄水又ハ其水源ニ毒物其他人ノ健康ヲ害ス可キ物ヲ混入シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス 第百四十七条 公衆ノ飲料ニ供スル浄水ノ水道ヲ損壊又ハ壅塞シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第十六章 通貨偽造ノ罪 第百四十八条 行使ノ目的ヲ以テ通用ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ偽造又ハ変造シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 2 偽造、変造ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シ若クハ輸入シタル者亦同シ 第百四十九条 行使ノ目的ヲ以テ内国ニ流通スル外国ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ偽造又ハ変造シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 2 偽造、変造ノ外国ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シ若クハ輸入シタル者亦同シ 第百五十条 行使ノ目的ヲ以テ偽造、変造ノ貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ収得シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 第百五十一条 前三条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百五十二条 貨幣、紙幣又ハ銀行券ヲ収得シタル後其偽造又ハ変造ナルコトヲ知テ之ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シタル者ハ其名価三倍以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス但一円以下ニ降スコトヲ得ス 第百五十三条 貨幣、紙幣又ハ銀行券ノ偽造又ハ変造ノ用ニ供スル目的ヲ以テ器械又ハ原料ヲ準備シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第十七章 文書偽造ノ罪 第百五十四条 行使ノ目的ヲ以テ御璽、国璽若クハ御名ヲ使用シテ詔書其他ノ文書ヲ偽造シ又ハ偽造シタル御璽、国璽若クハ御名ヲ使用シテ詔書其他ノ文書ヲ偽造シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 2 御璽、国璽ヲ押捺シ又ハ御名ヲ署シタル詔書其他ノ文書ヲ変造シタル者亦同シ 第百五十五条 行使ノ目的ヲ以テ公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書若クハ図画ヲ偽造シ又ハ偽造シタル公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書若クハ図画ヲ偽造シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 公務所又ハ公務員ノ捺印若クハ署名シタル文書若クハ図画ヲ変造シタル者亦同シ 3 前二項ノ外公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書若クハ図画ヲ偽造シ又ハ公務所又ハ公務員ノ作リタル文書若クハ図画ヲ変造シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス 第百五十六条 公務員其職務ニ関シ行使ノ目的ヲ以テ虚偽ノ文書若クハ図画ヲ作リ又ハ文書若クハ図画ヲ変造シタルトキハ印章、署名ノ有無ヲ区別シ前二条ノ例ニ依ル 第百五十七条 公務員ニ対シ虚偽ノ申立ヲ為シ権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本ニ不実ノ記載ヲ為サシメタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 2 公務員ニ対シ虚偽ノ申立ヲ為シ免状、鑑札又ハ旅券ニ不実ノ記載ヲ為サシメタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 3 前二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百五十八条 前四条ニ記載シタル文書又ハ図画ヲ行使シタル者ハ其文書又ハ図画ヲ偽造若クハ変造シ又ハ虚偽ノ文書若クハ図画ヲ作リ又ハ不実ノ記載ヲ為サシメタル者ト同一ノ刑ニ処ス 2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百五十九条 行使ノ目的ヲ以テ他人ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ権利、義務又ハ事実証明ニ関スル文書若クハ図画ヲ偽造シ又ハ偽造シタル他人ノ印章若クハ署名ヲ使用シテ権利、義務又ハ事実証明ニ関スル文書若クハ図画ヲ偽造シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 他人ノ印章ヲ押捺シ若クハ他人ノ署名シタル権利、義務又ハ事実証明ニ関スル文書若クハ図画ヲ変造シタル者亦同シ 3 前二項ノ外権利、義務又ハ事実証明ニ関スル文書若クハ図画ヲ偽造又ハ変造シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 第百六十条 医師公務所ニ提出ス可キ診断書、検案書又ハ死亡証書ニ虚偽ノ記載ヲ為シタルトキハ三年以下ノ禁錮又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス 第百六十一条 前二条ニ記載シタル文書又ハ図画ヲ行使シタル者ハ其文書又ハ図画ヲ偽造若クハ変造シ又ハ虚偽ノ記載ヲ為シタル者ト同一ノ刑ニ処ス 2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第十八章 有価証券偽造ノ罪 第百六十二条 行使ノ目的ヲ以テ公債証書、官府ノ証券、会社ノ株券其他ノ有価証券ヲ偽造又ハ変造シタル者ハ三月以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 行使ノ目的ヲ以テ有価証券ニ虚偽ノ記入ヲ為シタル者亦同シ 第百六十三条 偽造、変造ノ有価証券又ハ虚偽ノ記入ヲ為シタル有価証券ヲ行使シ又ハ行使ノ目的ヲ以テ之ヲ人ニ交付シ若クハ輸入シタル者ハ三月以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第十九章 印章偽造ノ罪 第百六十四条 行使ノ目的ヲ以テ御璽、国璽又ハ御名ヲ偽造シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 2 御璽、国璽又ハ御名ヲ不正ニ使用シ又ハ偽造シタル御璽、国璽又ハ御名ヲ使用シタル者亦同シ 第百六十五条 行使ノ目的ヲ以テ公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ偽造シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ不正ニ使用シ又ハ偽造シタル公務所又ハ公務員ノ印章若クハ署名ヲ使用シタル者亦同シ 第百六十六条 行使ノ目的ヲ以テ公務所ノ記号ヲ偽造シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 公務所ノ記号ヲ不正ニ使用シ又ハ偽造シタル公務所ノ記号ヲ使用シタル者亦同シ 第百六十七条 行使ノ目的ヲ以テ他人ノ印章若クハ署名ヲ偽造シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 他人ノ印章若クハ署名ヲ不正ニ使用シ又ハ偽造シタル印章若クハ署名ヲ使用シタル者亦同シ 第百六十八条 第百六十四条第二項、第百六十五条第二項、第百六十六条第二項及ヒ前条第二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第二十章 偽証ノ罪 第百六十九条 法律ニ依リ宣誓シタル証人虚偽ノ陳述ヲ為シタルトキハ三月以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第百七十条 前条ノ罪ヲ犯シタル者証言シタル事件ノ裁判確定前又ハ懲戒処分前自白シタルトキハ其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得 第百七十一条 法律ニ依リ宣誓シタル鑑定人又ハ通事虚偽ノ鑑定又ハ通訳ヲ為シタルトキハ前二条ノ例ニ同シ 第二十一章 誣告ノ罪 第百七十二条 人ヲシテ刑事又ハ懲戒ノ処分ヲ受ケシムル目的ヲ以テ虚偽ノ申告ヲ為シタル者ハ第百六十九条ノ例ニ同シ 第百七十三条 前条ノ罪ヲ犯シタル者申告シタル事件ノ裁判確定前又ハ懲戒処分前自白シタルトキハ其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得 第二十二章 猥褻、姦淫及ヒ重婚ノ罪 第百七十四条 公然猥褻ノ行為ヲ為シタル者ハ科料ニ処ス 第百七十五条 猥褻ノ文書、図画其他ノ物ヲ頒布若クハ販売シ又ハ公然之ヲ陳列シタル者ハ五百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス販売ノ目的ヲ以テ之ヲ所持シタル者亦同シ 第百七十六条 十三歳以上ノ男女ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ以テ猥褻ノ行為ヲ為シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス十三歳ニ満タサル男女ニ対シ猥褻ノ行為ヲ為シタル者亦同シ 第百七十七条 暴行又ハ脅迫ヲ以テ十三歳以上ノ婦女ヲ姦淫シタル者ハ強姦ノ罪ト為シ二年以上ノ有期懲役ニ処ス十三歳ニ満タサル婦女ヲ姦淫シタル者亦同シ 第百七十八条 人ノ心神喪失若クハ抗拒不能ニ乗シ又ハ之ヲシテ心神ヲ喪失セシメ若クハ抗拒不能ナラシメテ猥褻ノ行為ヲ為シ又ハ姦淫シタル者ハ前二条ノ例ニ同シ 第百七十九条 前三条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第百八十条 前四条ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス 第百八十一条 第百七十六条乃至第百七十九条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 第百八十二条 営利ノ目的ヲ以テ淫行ノ常習ナキ婦女ヲ勧誘シテ姦淫セシメタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス 第百八十三条 有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ処ス其相姦シタル者亦同シ 2 前項ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ之ヲ論ス但本夫姦通ヲ縦容シタルトキハ告訴ノ効ナシ 第百八十四条 配偶者アル者重ネテ婚姻ヲ為シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ処ス其相婚シタル者亦同シ 第二十三章 賭博及ヒ富籤ニ関スル罪 第百八十五条 偶然ノ輸贏ニ関シ財物ヲ以テ博戯又ハ賭事ヲ為シタル者ハ千円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス但一時ノ娯楽ニ供スル物ヲ賭シタル者ハ此限ニ在ラス 第百八十六条 常習トシテ博戯又ハ賭事ヲ為シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 賭博場ヲ開張シ又ハ博徒ヲ結合シテ利ヲ図リタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第百八十七条 富籤ヲ発売シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス 2 富籤発売ノ取次ヲ為シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス 3 前二項ノ外富籤ヲ授受シタル者ハ三百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス 第二十四章 礼拝所及ヒ墳墓ニ関スル罪 第百八十八条 神祠、仏堂、墓所其他礼拝所ニ対シ公然不敬ノ行為アリタル者ハ六月以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス 2 説教、礼拝又ハ葬式ヲ妨害シタル者ハ一年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 第百八十九条 墳墓ヲ発掘シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス 第百九十条 死体、遺骨、遺髪又ハ棺内ニ蔵置シタル物ヲ損壊、遺棄又ハ領得シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 第百九十一条 第百八十九条ノ罪ヲ犯シ死体、遺骨、遺髪又ハ棺内ニ蔵置シタル物ヲ損壊、遺棄又ハ領得シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第百九十二条 検視ヲ経スシテ変死者ヲ葬リタル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス 第二十五章 涜職ノ罪 第百九十三条 公務員其職権ヲ濫用シ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ権利ヲ妨害シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 第百九十四条 裁判、検察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ之ヲ補助スル者其職権ヲ濫用シ人ヲ逮捕又ハ監禁シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 第百九十五条 裁判、検察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ之ヲ補助スル者其職務ヲ行フニ当リ刑事被告人其他ノ者ニ対シ暴行又ハ陵虐ノ行為ヲ為シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 2 法令ニ因リ拘禁セラレタル者ヲ看守又ハ護送スル者被拘禁者ニ対シ暴行又ハ陵虐ノ行為ヲ為シタルトキ亦同シ 第百九十六条 前二条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第百九十七条 公務員又ハ仲裁人其職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ処ス因テ不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為ササルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス若シ其全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハサルトキハ其価額ヲ追徴ス 第百九十八条 公務員又ハ仲裁人ニ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス 2 前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得 第二十六章 殺人ノ罪 第百九十九条 人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役ニ処ス 第二百条 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス 第二百一条 前二条ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其予備ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス但情状ニ因リ其刑ヲ免除スルコトヲ得 第二百二条 人ヲ教唆若クハ幇助シテ自殺セシメ又ハ被殺者ノ嘱託ヲ受ケ若クハ其承諾ヲ得テ之ヲ殺シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス 第二百三条 第百九十九条、第二百条及ヒ前条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第二十七章 傷害ノ罪 第二百四条 人ノ身体ヲ傷害シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス 第二百五条 身体傷害ニ因リ人ヲ死ニ致シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 2 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ニ対シテ犯シタルトキハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス 第二百六条 前二条ノ犯罪アルニ当リ現場ニ於テ勢ヲ助ケタル者ハ自ラ人ヲ傷害セスト雖モ一年以下ノ懲役又ハ五十円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス 第二百七条 二人以上ニテ暴行ヲ加ヘ人ヲ傷害シタル場合ニ於テ傷害ノ軽重ヲ知ルコト能ハス又ハ其傷害ヲ生セシメタル者ヲ知ルコト能ハサルトキハ共同者ニ非スト雖モ共犯ノ例ニ依ル 第二百八条 暴行ヲ加ヘタル者人ヲ傷害スルニ至ラサルトキハ一年以下ノ懲役若クハ五十円以下ノ罰金又ハ拘留若クハ科料ニ処ス 2 前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス 第二十八章 過失傷害ノ罪 第二百九条 過失ニ因リ人ヲ傷害シタル者ハ五百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス 2 前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス 第二百十条 過失ニ因リ人ヲ死ニ致シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス 第二百十一条 業務上必要ナル注意ヲ怠リ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス 第二十九章 堕胎ノ罪 第二百十二条 懐胎ノ婦女薬物ヲ用ヒ又ハ其他ノ方法ヲ以テ堕胎シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ処ス 第二百十三条 婦女ノ嘱託ヲ受ケ又ハ其承諾ヲ得テ堕胎セシメタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス因テ婦女ヲ死傷ニ致シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第二百十四条 医師、産婆、薬剤師又ハ薬種商婦女ノ嘱託ヲ受ケ又ハ其承諾ヲ得テ堕胎セシメタルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス因テ婦女ヲ死傷ニ致シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第二百十五条 婦女ノ嘱託ヲ受ケス又ハ其承諾ヲ得スシテ堕胎セシメタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第二百十六条 前条ノ罪ヲ犯シ因テ婦女ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第三十章 遺棄ノ罪 第二百十七条 老幼、不具又ハ疾病ノ為メ扶助ヲ要ス可キ者ヲ遺棄シタル者ハ一年以下ノ懲役ニ処ス 第二百十八条 老者、幼者、不具者又ハ病者ヲ保護ス可キ責任アル者之ヲ遺棄シ又ハ其生存ニ必要ナル保護ヲ為ササルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ニ対シテ犯シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第二百十九条 前二条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第三十一章 逮捕及ヒ監禁ノ罪 第二百二十条 不法ニ人ヲ逮捕又ハ監禁シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ニ対シテ犯シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第二百二十一条 前条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第三十二章 脅迫ノ罪 第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又ハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ人ヲ脅迫シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス 2 親族ノ生命、身体、自由、名誉又ハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ人ヲ脅迫シタル者亦同シ 第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若クハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ脅迫シ又ハ暴行ヲ用ヒ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ権利ヲ妨害シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 親族ノ生命、身体、自由、名誉又ハ財産ニ対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ脅迫シ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ可キ権利ヲ妨害シタル者亦同シ 3 前二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第三十三章 略取及ヒ誘拐ノ罪 第二百二十四条 未成年者ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 第二百二十五条 営利、猥褻又ハ結婚ノ目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第二百二十六条 帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス 2 帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ売買シ又ハ被拐取者若クハ被売者ヲ帝国外ニ移送シタル者亦同シ 第二百二十七条 前三条ノ罪ヲ犯シタル者ヲ幇助スル目的ヲ以テ被拐取者又ハ被売者ヲ収受若クハ蔵匿シ又ハ隠避セシメタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス 2 営利又ハ猥褻ノ目的ヲ以テ被拐取者又ハ被売者ヲ収受シタル者ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第二百二十八条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第二百二十九条 第二百二十六条ノ罪、同条ノ罪ヲ幇助スル目的ヲ以テ犯シタル第二百二十七条第一項ノ罪及ヒ此等ノ罪ノ未遂罪ヲ除ク外本章ノ罪ハ営利ノ目的ニ出テサル場合ニ限リ告訴ヲ以テ之ヲ論ス但被拐取者又ハ被売者犯人ト婚姻ヲ為シタルトキハ婚姻ノ無効又ハ取消ノ裁判確定ノ後ニ非サレハ告訴ノ効ナシ 第三十四章 名誉ニ対スル罪 第二百三十条 公然事実ヲ摘示シ人ノ名誉ヲ毀損シタル者ハ其事実ノ有無ヲ問ハス一年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス 2 死者ノ名誉ヲ毀損シタル者ハ誣罔ニ出ツルニ非サレハ之ヲ罰セス 第二百三十一条 事実ヲ摘示セスト雖モ公然人ヲ侮辱シタル者ハ拘留又ハ科料ニ処ス 第二百三十二条 本章ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス 第三十五章 信用及ヒ業務ニ対スル罪 第二百三十三条 虚偽ノ風説ヲ流布シ又ハ偽計ヲ用ヒ人ノ信用ヲ毀損シ若クハ其業務ヲ妨害シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス 第二百三十四条 威力ヲ用ヒ人ノ業務ヲ妨害シタル者亦前条ノ例ニ同シ 第三十六章 窃盗及ヒ強盗ノ罪 第二百三十五条 他人ノ財物ヲ窃取シタル者ハ窃盗ノ罪ト為シ十年以下ノ懲役ニ処ス 第二百三十六条 暴行又ハ脅迫ヲ以テ他人ノ財物ヲ強取シタル者ハ強盗ノ罪ト為シ五年以上ノ有期懲役ニ処ス 2 前項ノ方法ヲ以テ財産上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者亦同シ 第二百三十七条 強盗ノ目的ヲ以テ其予備ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス 第二百三十八条 窃盗財物ヲ得テ其取還ヲ拒キ又ハ逮捕ヲ免レ若クハ罪跡ヲ湮滅スル為メ暴行又ハ脅迫ヲ為シタルトキハ強盗ヲ以テ論ス 第二百三十九条 人ヲ昏酔セシメテ其財物ヲ盗取シタル者ハ強盗ヲ以テ論ス 第二百四十条 強盗人ヲ傷シタルトキハ無期又ハ七年以上ノ懲役ニ処ス死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス 第二百四十一条 強盗婦女ヲ強姦シタルトキハ無期又ハ七年以上ノ懲役ニ処ス因テ婦女ヲ死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス 第二百四十二条 自己ノ財物ト雖モ他人ノ占有ニ属シ又ハ公務所ノ命ニ因リ他人ノ看守シタルモノナルトキハ本章ノ罪ニ付テハ他人ノ財物ト看做ス 第二百四十三条 第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条乃至第二百四十一条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第二百四十四条 直系血族、配偶者及ヒ同居ノ親族又ハ家族ノ間ニ於テ第二百三十五条ノ罪及ヒ其未遂罪ヲ犯シタル者ハ其刑ヲ免除シ其他ノ親族又ハ家族ニ係ルトキハ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス 2 親族又ハ家族ニ非サル共犯ニ付テハ前項ノ例ヲ用ヒス 第二百四十五条 本章ノ罪ニ付テハ電気ハ之ヲ財物ト看做ス 第三十七章 詐欺及ヒ恐喝ノ罪 第二百四十六条 人ヲ欺罔シテ財物ヲ騙取シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ方法ヲ以テ財産上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者亦同シ 第二百四十七条 他人ノ為メ其事務ヲ処理スル者自己若クハ第三者ノ利益ヲ図リ又ハ本人ニ損害ヲ加フル目的ヲ以テ其任務ニ背キタル行為ヲ為シ本人ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキハ五年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス 第二百四十八条 未成年者ノ知慮浅薄又ハ人ノ心神耗弱ニ乗シテ其財物ヲ交付セシメ又ハ財産上不法ノ利益ヲ得若クハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス 第二百四十九条 人ヲ恐喝シテ財物ヲ交付セシメタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス 2 前項ノ方法ヲ以テ財産上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者亦同シ 第二百五十条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス 第二百五十一条 本章ノ罪ニハ第二百四十二条、第二百四十四条及ヒ第二百四十五条ノ規定ヲ準用ス 第三十八章 横領ノ罪 第二百五十二条 自己ノ占有スル他人ノ物ヲ横領シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ処ス 2 自己ノ物ト雖モ公務所ヨリ保管ヲ命セラレタル場合ニ於テ之ヲ横領シタル者亦同シ 第二百五十三条 業務上自己ノ占有スル他人ノ物ヲ横領シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス 第二百五十四条 遺失物、漂流物其他占有ヲ離レタル他人ノ物ヲ横領シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス 第二百五十五条 本章ノ罪ニハ第二百四十四条ノ規定ヲ準用ス 第三十九章 贓物ニ関スル罪 第二百五十六条 贓物ヲ収受シタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス 2 贓物ノ運搬、寄蔵、故買又ハ牙保ヲ為シタル者ハ十年以下ノ懲役及ヒ千円以下ノ罰金ニ処ス 第二百五十七条 直系血族、配偶者、同居ノ親族又ハ家族及ヒ此等ノ者ノ配偶者ノ間ニ於テ前条ノ罪ヲ犯シタル者ハ其刑ヲ免除ス 2 親族又ハ家族ニ非サル共犯ニ付テハ前項ノ例ヲ用ヒス 第四十章 毀棄及ヒ隠匿ノ罪 第二百五十八条 公務所ノ用ニ供スル文書ヲ毀棄シタル者ハ三月以上七年以下ノ懲役ニ処ス 第二百五十九条 権利、義務ニ関スル他人ノ文書ヲ毀棄シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ処ス 第二百六十条 他人ノ建造物又ハ艦船ヲ損壊シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ処ス因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス 第二百六十一条 前三条ニ記載シタル以外ノ物ヲ損壊又ハ傷害シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス 第二百六十二条 自己ノ物ト雖モ差押ヲ受ケ、物権ヲ負担シ又ハ賃貸シタルモノヲ損壊又ハ傷害シタルトキハ前三条ノ例ニ依ル 第二百六十三条 他人ノ信書ヲ隠匿シタル者ハ六月以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五十円以下ノ罰金若クハ科料ニ処ス 第二百六十四条 第二百五十九条、第二百六十一条及ヒ前条ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ス