第1条
第一条 私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ
(2)権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス
(3)権利ノ濫用ハ之ヲ許サス
第一条 私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ
(2)権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス
(3)権利ノ濫用ハ之ヲ許サス
第一条ノ二 本法ハ個人ノ尊厳ト両性ノ本質的平等トヲ旨トシテ之ヲ解釈スヘシ
第四十三条 法人ハ法令ノ規定ニ従ヒ定款又ハ寄附行為ニ因リテ定マリタル目的ノ範囲内ニ於テ権利ヲ有シ義務ヲ負フ
第九十条 公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル事項ヲ目的トスル法律行為ハ無効トス
第九十九条 代理人カ其権限内ニ於テ本人ノ為メニスルコトヲ示シテ為シタル意思表 示ハ直接ニ本人ニ対シテ其効力ヲ生ス
(2)前項ノ規定ハ第三者カ代理人ニ対シテ為シタル意思表示ニ之ヲ準用ス
第百条 代理人カ本人ノ為メニスルコトヲ示サスシテ為シタル意思表示ハ自己ノ為メニ之ヲ為シタルモノト看做ス但相手方カ其本人ノ為メニスルコトヲ知リ又ハ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシトキハ前条第一項ノ規定ヲ準用ス
第百一条 意思表示ノ効力カ意思ノ欠缺、詐欺、強迫又ハ或事情ヲ知リタルコト若クハ之ヲ知ラサル過失アリタルコトニ因リテ影響ヲ受クヘキ場合ニ於テ其事実ノ有無ハ代理人ニ付キ之ヲ定ム
(2)特定ノ法律行為ヲ為スコトヲ委託セラレタル場合ニ於テ代理人カ本人ノ指図ニ従ヒ其行為ヲ為シタルトキハ本人ノ其自ラ知リタル事情ニ付キ代理人ノ不知ヲ主張スルコトヲ得ス其過失ニ因リテ知ラサリシ事情ニ付キ亦同シ
第百二条 代理人ハ能力者タルコトヲ要セス
第百三条 権限ノ定ナキ代理人ハ左ノ行為ノミヲ為ス権限ヲ有ス
一 保存行為
二 代理人ノ目的タル物又ハ権利ノ性質ヲ変セサル範囲内ニ於テ其利用又ハ改良ヲ目的トスル行為
第百四条 委任ニ因ル代理人ハ本人ノ許諾ヲ得タルトキ又ハ已ムコトヲ得サル事由アルトキニ非サレハ復代理人ヲ選任スルコトヲ得ス
第百五条 代理人カ前条ノ場合ニ於テ復代理人ヲ選任シタルトキハ選任及ヒ監督ニ付キ本人ニ対シテ其責ニ任ス
(2)代理人カ本人ノ指名ニ従ヒテ復代理人ヲ選任シタルトキハ其不適任又ハ不誠実ナルコトヲ知リテ之ヲ本人ニ通知シ又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠リタルニ非サレハ其責ニ任セス
第百六条 法定代理人ハ其責任ヲ以テ復代理人ヲ選任スルコトヲ得但已ムコトヲ得サル事由アリタルトキハ前条第一項ニ定メタル責任ノミヲ負フ
第百七条 復代理人ハ其権限内ノ行為ニ付キ本人ヲ代表ス
(2)復代理人ハ本人及ヒ第三者ニ対シテ代理人ト同一ノ権利義務ヲ有ス
第百八条 何人ト雖モ同一ノ法律行為ニ付キ其相手方ノ代理人ト為リ又ハ当事者双方ノ代理人ト為ルコトヲ得ス但債務ノ履行ニ付テハ此限ニ在ラス
第百九条 第三者ニ対シテ他人ニ代理権ヲ与ヘタル旨ヲ表示シタル者ハ其代理権ノ範囲内ニ於テ其他人ト第三者トノ間ニ為シタル行為ニ付キ其責ニ任ス
第百十条 代理人カ其権限外ノ行為ヲ為シタル場合ニ於テ第三者カ其権限アリト信スヘキ正当ノ理由ヲ有セシトキハ前条ノ規定ヲ準用ス
第百十一条 代理権ハ左ノ事由ニ因リテ消滅ス
一 本人ノ死亡
二 代理人ノ死亡、禁治産又ハ破産
(2)此他委任ニ因ル代理権ハ委任ノ終了ニ因リテ消滅ス
第百十二条 代理権ノ消滅ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス但第三者カ過失ニ因リテ其事実ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス
第百十三条 代理権ヲ有セサル者カ他人ノ代理人トシテ為シタル契約ハ本人カ其追認ヲ為スニ非サレハ之ニ対シテ其効力ヲ生セス
(2)追認又ハ其拒絶ハ相手方ニ対シテ之ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ其相手方ニ対抗スルコトヲ得ス但相手方カ其事実ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス
第百十四条 前条ノ場合ニ於テ相手方ハ相当ノ期間ヲ定メ其期間内ニ追認ヲ為スヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ本人ニ催告スルコトヲ得若シ本人カ其期間内ニ確答ヲ為ササルトキハ追認ヲ拒絶シタルモノト看做ス
第百十五条 代理権ヲ有セサル者ノ為シタル契約ハ本人ノ追認ナキ間ハ相手方ニ於テ之ヲ取消スコトヲ得但契約ノ当時相手方カ代理権ナキコトヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス
第百十六条 追認ハ別段ノ意思表示ナキトキハ契約ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス但第三者ノ権利ヲ害スルコトヲ得ス
第百十七条 他人ノ代理人トシテ契約ヲ為シタル者カ其代理権ヲ証明スルコト能ハス且本人ノ追認ヲ得サリシトキハ相手方ノ選択ニ従ヒ之ニ対シテ履行又ハ損害賠償ノ責ニ任ス
(2)前項ノ規定ハ相手方カ代理権ナキコトヲ知リタルトキ若クハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキ又ハ代理人トシテ契約ヲ為シタル者カ其能力ヲ有セサリシトキハ之ヲ適用セス
第百十八条 単独行為ニ付テハ其行為ノ当時相手方カ代理人ト称スル者ノ代理権ナクシテ之ヲ為スコトニ同意シ又ハ其代理権ヲ争ハサリシトキニ限リ前五条ノ規定ヲ準用ス代理権ヲ有セサル者ニ対シ其同意ヲ得テ単独行為ヲ為シタルトキ亦同シ
第百十九条 無効ノ行為ハ追認ニ因リテ其効力ヲ生セス但当事者カ其無効ナルコトヲ知リテ追認ヲ為シタルトキハ新ナル行為ヲ為シタルモノト看做ス
第百二十条 取消シ得ヘキ行為ハ無能力者若クハ瑕疵アル意思表示ヲ為シタル者、其 代理人又ハ承継人ニ限リ之ヲ取消スコトヲ得
第七百二十八条 姻族関係は、離婚によつて終了する
2) 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様である。
第七百二十九条 養子、その配偶者、直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によつて終了する。
729条 族関係及ヒ前条ノ親族関係ハ離婚ニ因リテ止ム
夫婦ノ一方カ死亡シタル場合ニ於テ生存配偶者カ其家ヲ去リタルトキ亦同シ
第七百三十条 直系血族及び同居の親族は、互に扶け合わなければならない。
第七百三十一条 男は、満十八歳に、女は、満十六歳にならなければ、婚姻をするこ とができない。
第七百三十二条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
第七百三十三条 女は、前婚の解消又は取消の日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
(2) 女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日か、前項の規定を適用しない。
第七百三十四条 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。但し、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
(2) 第八百十七条の九の規定によつて親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
第七百三十五条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第七百二十八条又は第八百十七条の九の規定によつて姻族関係が終了した後も、同様である。
第七百三十六条 養子、その配偶者、直系卑属又はその配偶者と養親又はその直系尊 属との間では、第七百二十九条の規定によつて親族関係が終了した後でも、婚姻 をすることができない。
第七百三十七条 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
(2) 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一 方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないと きも、同様である。
第七百三十八条 禁治産者が婚姻をするには、その後見人の同意を要しない。
第七百三十九条 婚姻は、戸籍法の定めるところによりこれを届け出ることによつ て、その効力を生ずる。
(2) 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上から、口頭又は署名し た書面で、これをしなければならない。
第七百四十条 婚姻の届出は、その婚姻が第七百三十一条乃至第七百三十七条及び前 条第二項の規定その他の法令に違反しないことを認めた後でなければ、これを受 理することができない。
第七百四十一条 外国に在る日本人間で婚姻をしようとするときは、その国に駐在す る日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合には、前 二条の規定を準用する。
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互に扶養をする義務がある。
(2) 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合の外、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
(3) 前項の規定による審判があつた後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所 は、その審判を取り消すことができる。
第八百七十八条 扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者 の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある 場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するに足りないとき、扶養を 受けるべき者の順序についても、同様である。
第八百八十二条 相続は、死亡によつて開始する。
第八百八十三条 相続は、被相続人の住所において開始する。
第八百八十四条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害さ れた事実を知つた時から五年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。 相続開始の時から二十年を経過したときも同様である。
第八百八十五条 相続財産に関する費用は、その財産の中から、これを支弁する。但 し、相続人の過失によるものは、この限りでない。
(2) 前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によつて得た財産を以て、これ を支弁することを要しない。
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
(2) 前項の規定は 胎児が死体で生まれたときは、これを適用しない。
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
(2) 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の 規定に該当し、若しくは廃除によつて、その相続権を失つたときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
但し、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
(3) 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によつて、その代襲相続権を失つた場合にこれを準用する。
第八百八十八条 削除
第八百八十九条 左に掲げる者は、第八百八十七条の規定によつて相続人となるべき者がない場合には、左の順位に従つて相続人となる。
第一 直系尊属。但し、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
第二 兄弟姉妹
(2) 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合にこれを準用する。
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、前三条 の規定によつて相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
第八百九十一条 左に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位に在る者を死亡する に至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知つて、これを告発せず、又は告訴しなかつた 者。但し、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若し くは直系血族であつたときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によつて、被相続人が相続に関する遺言をし、これを取り消し、又はこれを変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によつて、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取り消 させ、又はこれを変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利 義務を承継する。但し、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に 従つて祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。但し、被相続人の指定に従つて祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が、これを承継する。
(2) 前項本文の場合において慣習が明かでないときは、前項の権利を承継すべ き者は、家庭裁判所がこれを定める。
第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。 第八百九十九条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、左の規定に従う。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各 二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。但し、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同 じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
第九百一条 第八百八十七条第二項又は第三項の規定によつて相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであつたものと同じである。但し、直系 卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであつた部分につい て、前条の規定に従つてその相続分を定める。
(2) 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定によつて兄弟姉妹の子が相続 人となる場合にこれを準用する。
第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。但し、被相続 人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
(2) 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定によつてこれを定める。
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のた め若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始 の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみな し、前三条の規定によつて算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控 除し、その残額を以てその者の相続分とする。
(2) 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるとき は、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
(3) 被相続人が前二項の規定と異なつた意思を表示したときは、その意思表示 は、遺留分に関する規定に反しない範囲内で、その効力を有する。
第九百四条 前条に掲げる贈与の価額は、受贈者の行為によつて、その目的たる財産 が滅失し、又はその価格の増減があつたときでも、相続開始の当時なお原状のま まで在るものとみなしてこれを定める。
第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の 給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加に つき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した 財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続 財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定によつて算定した相続分に寄 与分を加えた額をもつてその者の相続分とする。
(2) 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭 裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び 程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
(3) 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の 価額を控除した額を超えることができない。
(4) 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があつた場合又は第 九百十条に規定する場合にすることができる。
第九百五条 共同相続人の一人が分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、 他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けること ができる。
(2) 前項に定める権利は、一箇月以内にこれを行わなければならない。
第九百六条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年 齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
第九百七条 共同相続人は、第九百八条の規定によつて被相続人が遺言で禁じた場合 を除く外、何時でも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
(2) 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をす ることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求する ことができる。
(3) 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定め て、遺産の全部又は一部について、分割を禁ずることができる。
第九百八条 被相続人は、遺言で分、割の方法を定め、若しくはこれを定めることを 第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間内分割を禁ずること ができる。
第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼつてその効力を生ずる。但し、 第三者の権利を害することができない。
第九百十条 相続の開始後認知によつて相続人となつた者が遺産の分割を請求しよう とする場合において、他の共同相続人が既に分割その他の処分をしたときは、価 額のみによる支払の請求権を有する。
第九百十一条 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続 分に応じて担保の責に任ずる。
第九百十二条 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が分割によつて 受けた債権について、分割の当時における債務者の資力を担保する。
(2) 弁済期に至らない債権及び停止条件附の債権については、各共同相続人 は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
第九百十三条 担保の責に任ずる共同相続人中に償還をする資力のない者があるとき は、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、各〃 その相続分に応じてこれを分担する。但し、求償者に過失があるときは、他の共 同相続人に対して分担を請求することができない。
第九百十四条 前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、こ れを適用しない。
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があつたことを知つた時から三箇 月以内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。但し、この 期間は、利害関係人又は検察官の請求によつて、家庭裁判所において、これを伸 長することができる。
(2) 相続人は、承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができ る。
第九百十六条 相続人が承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間 は、その者の相続人が自己のために相続の開始があつたことを知つた時から、こ れを起算する。
第九百十七条 相続人が無能力者であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その 法定代理人が無能力者のために相続の開始があつたことを知つた時から、これを 起算する。 第九百十八条 相続人は、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産を管 理しなければならない。但し、承認又は放棄をしたときは、この限りでない。 (2) 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によつて、何時でも、相続財 産の保存に必要な処分を命ずることができる。 (3) 家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条の規 定を準用する。 第九百十九条 承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、これを取り消す ことができない。 (2) 前項の規定は、第一編及び前編の規定によつて承認又は放棄の取消をする ことを妨げない。但し、その取消権は、追認をすることができる時から六箇月 間これを行わないときは、時効によつて消滅する。承認又は放棄の時から十年 を経過したときも、同様である。 (3) 前項の規定によつて限定承認又は放棄の取消をしようとする者は、その旨 を家庭裁判所に申述しなければならない。
第九百六十条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、これをすることがで きない。
第九百六十一条 満十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならな い。
第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分 することができる。但し、遺留分に関する規定に違反することができない。
第九百六十六条 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しく は直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
(2) 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、 これを適用しない。
第千二十八条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、左の額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の三分の一
二 その他の場合には、被相続人の財産の二分の一
第千二十九条 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその 贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して、これを算定す る。
(2) 条件附の権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選定した鑑定 人の評価に従つて、その価格を定める。
第千三十条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によつてそ の価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知つて贈与 をしたときは、一年前にしたものでも、同様である。
第千三十一条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するに必要な限度で、 遺贈及び前条に掲げる贈与の減殺を請求することができる。
第千三十二条 条件附の権利又は存続期間の不確定な権利を贈与又は遺贈の目的とし た場合において、その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者 は、第千二十九条第二項の規定によつて定めた価格に従い、直ちにその残部の価 額を受贈者又は受遺者に給付しなければならない。
第千三十三条 贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、これを減殺することができな い。 第千三十四条 遺贈は、その目的の価額の割合に応じてこれを減殺する。但し、遺言 者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
第千三十五条 贈与の減殺は、後の贈与から始め、順次に前の贈与に及ぶ。
第千三十六条 受贈者は、その返還すべき財産の外、なお、減殺の請求があつた日以後の果実を返還しなければならない。
第千三十七条 減殺を受けるべき受贈者の無資力によつて生じた損失は、遺留分権利 者の負担に帰する。
第千三十八条 負担附贈与は、その目的の価額の中から負担の価額を控除したものに ついて、その減殺を請求することができる。
第千三十九条 不相当な対価を以てした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損 害を加えることを知つてしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合におい て、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければなら ない。
第千四十条 減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留 分権利者にその価額を弁償しなければならない。但し、譲受人が譲渡の当時遺留 分権利者に損害を加えることを知つたときは、遺留分権利者は、これに対しても 減殺を請求することができる。
(2) 前項の規定は、受贈者が贈与の目的の上に権利を設定した場合にこれを準 用する。
第千四十一条 受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈 の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免かれることができる。
(2) 前項の規定は、前条第一項但書の場合にこれを準用する。
第千四十二条 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又 は遺贈があつたことを知つた時から、一年間これを行わないときは、時効によつ て消滅する。相続の開始の時から十年を経過したときも、同様である。
第千四十三条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたと きに限り、その効力を生ずる。
(2) 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影 響を及ぼさない。
第千四十四条 第八百八十七条第二項、第三項、第九百条、第九百一条、第九百三条 及び第九百四条の規定は、遺留分にこれを準用する。