尊属殺人の規定(刑法第200条)の合憲性(第14条)

昭和二十五年十月二十五日大法廷判決

尊属殺人

2105号
判決
棄却(補足意見一名、反対意見二名)
主文
本件を棄却する
要旨
刑法第200条は、憲法第14条に違反するものでないことは、当裁判所が昭和25年あ第292号事件について、同年10月11日言渡した大法廷判決の趣旨に徴して、明らかである。
参照条文
刑法第200条
憲法第14条
裁判結果

【判決理由】多数意見

弁護人松永東、同小山胖の上告趣意第一点について。

刑法200条は、憲法14条に違反するものでないことは、当裁判所が昭和二五年(あ)第二九二号事件について、同年10月11日言渡した大法廷判決の趣旨に徴して、明らかである。(尤も、刑法200条が、その法定刑として死刑又は無期懲役のみを規定していることは、厳に失するの憾みがないではないが、これとても、犯情の如何によつては、刑法の規定に従つて刑を減軽することはできるのであつて、いかなる限度にまで減刑を認めるべきかというがごとき、所詮は、立法の当否の問題に帰するもので、これがために同条をもつて憲法に違反するものと断ずることはできない。)

論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決は、その挙示の証拠を綜合して、判示犯罪事実の全体を認定したことは、原判文上明らかであつて、 所論殺人の故意についても、原判決は所論のように被告人に対する検事の聴取書、及び、第一審公判調書中被告人の供述記載のみによつて認定したものではなく、

その他、鑑定人A作成の鑑定書の記載、押収にかかる薪割一挺の存在等を綜合してこれを認定したものであることは、また、原判文上みとめ得るところである。

従つてこの点に関する論旨は理由がない。

次に、右検事の聴取書における被告人の供述、及び、第一審公判における被告人の供述が、所論のように強制にもとずくものであるとの事実は、本件において、これを認める証跡はなく、

又、右被告人の第一審公判における供述は、被告人の拘禁(昭和二二年二月七日)後三ケ月余を経過した後のものではあるが、

本件記録にあらわれた各般の事情を勘案すれば、右拘禁をもつて所論のように不当に長い拘禁とすることはできない。論旨はいずれも理由がない。

この判決は、裁判官斎藤悠輔の論旨第一点に対する補足意見(前掲判決参照)及び裁判官真野毅、同穂積重遠を除く他の裁判官の一致した意見である。

裁判官真野毅、同穂積重遠の意見は論旨第一点を採用して原判決を破毀すべきものとするのであるが、理由は本判決に引用された昭和二五年(あ)第二九二号事件判決に附記のとおりである。