ヘロドトス「歴史」第73章

The Origin of Human Society

ヘロドトス「歴史」第73章

ἐστρατεύετο δὲ ὁ Κροῖσος ἐπὶ τὴνΚαππαδοκίην τῶνδε εἵνεκα, καὶ γῆς ἱμέρῳπροσκτήσασθαι πρὸς τὴν ἑωυτοῦ μοῖρανβουλόμενος, καὶ μάλιστα τῷ χρηστηρίῳπίσυνος ἐὼν καὶ τίσασθαι θέλων ὑπὲρἈστυάγεος Κῦρον.

この文は古代ギリシャ語で書かれており、日本語に翻訳すると次のようになります:

「クロイソスはカッパドキアへ軍を進めたが、その理由は次の二つであった。一つは自分の領土に隣接する地を手に入れたいという欲望からであり、もう一つは神託を信じ、アスティアゲスのためにキュロスに復讐したいと考えたからである。」

文法の解説は以下の通りです:

καὶ τίσασθαι θέλων:「復讐を望んで」

ἐστρατεύετο:「軍を進めた」という意味の動詞。未完了過去の形です。

ὁ Κροῖσος:「クロイソス」(人名)で、主語です。

ἐπὶ τὴν Καππαδοκίην:「カッパドキアへ」となり、「ἐπί + 対格」で目的地を表します。

τῶνδε εἵνεκα:「これらの理由のために」という表現で、目的を示します。

καὶ γῆς ἱμέρῳ προσκτήσασθαι:「土地を自分の領土に加えたいという欲望で」。「γῆς」(土地)+「ἱμέρῳ」(欲望)+「προσκτήσασθαι」(獲得する)。

πρὸς τὴν ἑωυτοῦ μοῖραν:「自分の領土に隣接する」。

τῷ χρηστηρίῳ πίσυνος ἐὼν:「神託を信じて」。


Ἀστυάγεα γὰρ τὸν Κυαξάρεω, ἐόντα Κροίσουμὲν γαμβρὸν Μήδων δὲ βασιλέα, Κῦρος ὁΚαμβύσεω καταστρεψάμενος εἶχε, γενόμενονγαμβρὸν Κροίσῳ ὧδε.

この文の日本語訳は以下のようになります:

「クロイソスの義理の息子であり、メディア人の王であったアスティアゲス(キュアクサレスの子)は、カンビュセスの子であるキュロスに打ち負かされ捕らえられていた。クロイソスの義理の息子になった経緯は次の通りである。」

文法の解説は以下の通りです:

  1. Ἀστυάγεα:「アスティアゲス」(人名)で、目的格です。
  2. γὰρ:「というのも」という意味で、説明を導きます。
  3. τὸν Κυαξάρεω:「キュアクサレスの子の」という意味で、アスティアゲスの父親を表します。
  4. ἐόντα Κροίσου μὲν γαμβρὸν:「クロイソスの義理の息子であり」という意味です。
  • ἐόντα:「〜である」という現在分詞。
  • γαμβρὸν:「義理の息子」。

γενόμενον γαμβρὸν Κροίσῳ:「クロイソスの義理の息子となった」

Μήδων δὲ βασιλέα:「メディア人の王である」。「Μήδων」(メディア人)+「βασιλέα」(王)。

Κῦρος ὁ Καμβύσεω:「カンビュセスの子であるキュロス」。

καταστρεψάμενος:「打ち負かして」という意味の分詞です。

εἶχε:「捕らえていた」。


Σκυθέων τῶν νομάδων εἴλῃ ἀνδρῶνστασιάσασα ὑπεξῆλθε ἐς γῆν τὴν Μηδικήν·ἐτυράννευε δὲ τὸν χρόνον τοῦτον ΜήδωνΚυαξάρης ὁ Φραόρτεω τοῦ Δηιόκεω, ὃς τοὺςΣκύθας τούτους τὸ μὲν πρῶτον περιεῖπε εὖ ὡςἐόντας ἱκέτας· ὥστε δὲ περὶ πολλοῦποιεόμενος αὐτούς, παῖδάς σφι παρέδωκε τὴνγλῶσσάν τε ἐκμαθεῖν καὶ τὴν τέχνην τῶντόξων.

この文は古典ギリシャ語のヘロドトスの『歴史』からの一節です。文法と翻訳を以下に説明します。

原文の文法と構成

  1. 「Σκυθέων τῶν νομάδων εἴλῃ ἀνδρῶν στασιάσασα ὑπεξῆλθε ἐς γῆν τὴν Μηδικήν」
  • Σκυθέων:スキタイ人(複数属格)
  • τῶν νομάδων:「遊牧民の」という意味の定冠詞+修飾語(属格)
  • εἴλῃ ἀνδρῶν:「一団の男たち」(εἴλη: 一団、ἀνδρῶν: 男たちの属格)
  • στασιάσασα:「反乱を起こした」(aorist participle, feminine, nominative, singular, active)
  • ὑπεξῆλθε:「脱出した」(aorist indicative, 3rd person singular)
  • ἐς γῆν τὴν Μηδικήν:「メディアの地へ」(ἐς+対格)
  1. 「ἐτυράννευε δὲ τὸν χρόνον τοῦτον Μήδων Κυαξάρης」
  • ἐτυράννευε:「支配していた」(imperfect indicative, 3rd person singular)
  • τὸν χρόνον τοῦτον:「その時期に」(時間の対格表現)
  • Μήδων:「メディア人の」(属格)
  • Κυαξάρης:「キュアクサレス(メディアの王)」
  1. 「ὁ Φραόρτεω τοῦ Δηιόκεω」
  • キュアクサレスを詳しく説明するための語句
  • :「~である人」
  • Φραόρτεω:「フラオルテスの息子」(属格)
  • τοῦ Δηιόκεω:「デイオケスの息子の」(属格)
  1. 「ὃς τοὺς Σκύθας τούτους τὸ μὲν πρῶτον περιεῖπε εὖ ὡς ἐόντας ἱκέτας」
  • ὃς:「そしてその人(キュアクサレスは)」(関係代名詞)
  • τοὺς Σκύθας τούτους:「このスキタイ人たちを」(対格)
  • τὸ μὲν πρῶτον:「まず第一に」
  • περιεῖπε εὖ:「好意的に受け入れた」
  • ὡς ἐόντας ἱκέτας:「彼らを亡命者として」
  1. 「ὥστε δὲ περὶ πολλοῦ ποιεόμενος αὐτούς, παῖδάς σφι παρέδωκε τὴν γλῶσσάν τε ἐκμαθεῖν καὶ τὴν τέχνην τῶν τόξων」
  • ὥστε:「その結果」
  • περὶ πολλοῦ ποιεόμενος:「彼らを重んじたために」
  • παῖδάς σφι παρέδωκε:「彼らに子供たちを委ねた」
  • τὴν γλῶσσάν τε ἐκμαθεῖν:「言語を習わせるために」
  • καὶ τὴν τέχνην τῶν τόξων:「弓術を学ばせるために」

和訳

「遊牧民であるスキタイ人のある男たちの集団が反乱を起こし、メディアの地へ逃れた。当時、メディア人を支配していたのはフラオルテスの息子でデイオケスの孫にあたるキュアクサレスであった。キュアクサレスはまず、このスキタイ人たちを亡命者として好意的に受け入れ、彼らを非常に重んじたため、彼らに自分の子供たちを預け、言語と弓術を学ばせるようにした。」

χρόνου δὲ γενομένου, καὶ αἰεὶ φοιτεόντων τῶνΣκυθέων ἐπʼ ἄγρην καὶ αἰεί τι φερόντων, καὶκοτε συνήνεικε ἑλεῖν σφεας μηδέν·νοστήσαντας δὲ αὐτοὺς κεινῇσι χερσὶ ὁΚυαξάρης (ἦν γάρ, ὡς διέδεξε, ὀργὴν ἄκρος)τρηχέως κάρτα περιέσπε ἀεικείῃ.

οἳ δὲ ταῦτα πρὸς Κυαξάρεω παθόντες, ὥστεἀνάξια σφέων αὐτῶν πεπονθότες, ἐβούλευσαντῶν παρὰ σφίσι διδασκομένων παίδων ἕνακατακόψαι, σκευάσαντες δὲ αὐτὸν ὥσπερἐώθεσαν καὶ τὰ θηρία σκευάζειν, Κυαξάρῃδοῦναι φέροντες ὡς ἄγρην δῆθεν, δόντες δὲτὴν ταχίστην κομίζεσθαι παρὰ Ἀλυάττεα τὸνΣαδυάττεω ἐς Σάρδις.

ταῦτα καὶ ἐγένετο. καὶ γὰρ Κυαξάρης καὶ οἱπαρεόντες δαιτυμόνες τῶν κρεῶν τούτωνἐπάσαντο, καὶ οἱ Σκύθαι ταῦτα ποιήσαντεςἈλυάττεω ἱκέται ἐγένοντο.