テュキュディデス「戦史」第15章
τὰ μὲν οὖν ναυτικὰ τῶν Ἑλλήνων τοιαῦτα ἦν, τά τε παλαιὰ καὶ τὰὕστερον γενόμενα. ἰσχὺν δὲ περιεποιήσαντο ὅμως οὐκ ἐλαχίστην οἱπροσσχόντες αὐτοῖς χρημάτων τε προσόδῳ καὶ ἄλλων ἀρχῇ·ἐπιπλέοντες γὰρ τὰς νήσους κατεστρέφοντο, καὶ μάλιστα ὅσοι μὴδιαρκῆ εἶχον χώραν.
「ギリシャ人の海軍は、このように古いものから後に発展したものまで存在していた。海軍に注力した人々は、財産の収入や他の支配権を通じて、決して小さくない勢力を得ていた。彼らは海に出て島々を征服し、とりわけ十分な領土を持たない者たちはそれを行った。」
この文章は、ギリシャ人の海軍の発展を振り返り、海軍力を強化した者たちが経済的な収入や島々の支配を通じて勢力を拡大したことを述べています。
κατὰ γῆν δὲ πόλεμος, ὅθεν τις καὶ δύναμις παρεγένετο, οὐδεὶςξυνέστη· πάντες δὲ ἦσαν, ὅσοι καὶ ἐγένοντο, πρὸς ὁμόρους τοὺςσφετέρους ἑκάστοις, καὶ ἐκδήμους στρατείας πολὺ ἀπὸ τῆς ἑαυτῶν ἐπ’ἄλλων καταστροφῇ οὐκ ἐξῇσαν οἱ Ἕλληνες. οὐ γὰρ ξυνειστήκεσανπρὸς τὰς μεγίστας πόλεις ὑπήκοοι, οὐδ’ αὖ αὐτοὶ ἀπὸ τῆς ἴσης κοινὰςστρατείας ἐποιοῦντο, κατ’ ἀλλήλους δὲ μᾶλλον ὡς ἕκαστοι οἱἀστυγείτονες ἐπολέμουν.
「地上での戦争、そこから力が生じたが、そのような戦争は存在しなかった。全ての者が、各々の隣接する者に対して戦っており、遠征して他の地域を征服するような戦いにはギリシャ人は参加しなかった。彼らは大都市に従属して団結していたわけではなく、平等な立場から共通の軍事行動を行うこともなかった。むしろ、各都市の隣接する者同士が互いに戦争をしていたのである。」
μάλιστα δὲ ἐς τὸν πάλαι ποτὲ γενόμενον πόλεμον Χαλκιδέων καὶἘρετριῶν καὶ τὸ ἄλλο Ἑλληνικὸν ἐς ξυμμαχίαν ἑκατέρων διέστη.
「特に、かつて起こったハルキス人とエレトリア人の戦争において、他のギリシャ人たちもそれぞれの側に分かれて同盟を結んだ。」
この文は、古代ギリシャにおけるハルキス人とエレトリア人の間の戦争が、ギリシャ全体に影響を与え、他の都市国家や勢力がそれぞれの陣営に分かれて同盟を結んだことを示しています。
ハルキス人(Chalcidians)とエレトリア人(Eretria)は、古代ギリシアの都市国家(ポリス)で、彼らの間で繰り広げられた戦争は「レランディア戦争」(Lelantine War)として知られています。この戦争は紀元前8世紀末から7世紀初頭にかけて起こり、ギリシアの歴史において初期の大規模なポリス間の戦争とされています。
背景
この戦争は、エヴィア島(エウボイア島、Euboea)にある両都市国家、ハルキスとエレトリアがレランディア平原(Lelantine Plain)の肥沃な土地を巡って争ったことに端を発しています。レランディア平原は、農業に非常に適しており、その領有権は両都市国家にとって非常に重要でした。
戦争の展開
ハルキスとエレトリアの戦いは、両都市の間だけでなく、ギリシアの他の主要都市国家を巻き込んだものでした。それぞれが同盟国を持ち、例えばハルキスはコリントス(Corinth)やテッサリア(Thessaly)の支援を受け、エレトリアはミレトス(Miletus)やサモス(Samos)といった同盟都市から支援を受けました。
この戦争は、初期のギリシアの戦争の中でも重要なものとされ、戦争の結果、地域の政治的・経済的な影響力が変動しました。
結果
具体的な戦争の結末についてははっきりしていませんが、最終的にはハルキスがエレトリアに勝利し、レランディア平原を支配下に置いたと考えられています。また、この戦争を契機に、古代ギリシアの多くのポリスがそれぞれの軍事力を強化するようになったとされています。
この戦争は、ギリシア世界における初期の国家間の紛争の一例であり、その後のギリシア史における戦争や政治的な対立の基盤の一部となりました。